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APNIC 50でのIPアドレス・AS番号分配ポリシーに関する提案ご紹介

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2020年9月8日(火)~10日(木)の日程で、APNIC 50カンファレンスが開催されます。

APNIC 50 Webサイト

当初、バングラデシュ・ダッカでの開催が予定されていましたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、全期間を通してオンライン会議システムのZoomを利用して開催することとなりました。オンライン開催となりましたが、これまでどおり参加登録が必要となりますので、会期の開始までにAPNIC 50カンファレンスのWebサイトから参加登録を忘れずに行うようにしてください。

APNICでは、IPアドレス・AS番号の分配ポリシーに関する議論を、ポリシーSIG (Special Interest Group)で行うこととしています。議論は主にポリシーSIGのメーリングリストで行われていますが、1年に2回開催されるAPNICカンファレンスにおいて、オープンポリシーミーティングという名称でオフラインでの議論の場を設けることとしています。今回はこのオフラインでの議論の場が、オンライン開催されることになります。少しややこしいですね 😎 

今回のポリシーSIGでは、以下2点のポリシーの変更提案に関する議論が予定されていました。

  1. prop-130 : Modification of transfer policies(移管ポリシーの修正)
  2. prop-133 : Clarification on Sub-Assignments(再割り当ての定義の明確化)

提案者はAPNIC管轄地域外に居住しており、時差などの関係からオンラインでの参加が難しいため、引き続きの議論は2021年2月に開催予定APNIC 51カンファレンスで実施予定であることが、チェアから発表されています。


2020年2月に開催されたAPNIC 49カンファレンスは、オーストラリア・メルボルンで開催されましたので、今回のAPNIC 50カンファレンスは初めての完全オンライン開催となります。

ポリシーの内容を変更する際には、提案の提出から実装までの一連の流れを定めたポリシー策定プロセス(PDP; Policy Development Process)に従って、手続きが進むことになります。

世界に五つある地域インターネットレジストリ(RIR; Regional Internet Registry)のいくつかは、完全オンライン開催のカンファレンスを開催しています。ヨーロッパおよび中東地域を担当するRIPE NCC (Reseaux IP Europeens Network Coordination Centre)、北米とカリブ海周辺の一部地域を担当するARIN (American Registry for Internet Numbers)での模様から、オンライン開催と、各RIRにおけるポリシー策定プロセスとの関係について少しご紹介したいと思います。

RIPE 80およびARIN 45カンファレンスで議論された提案内容には今回は触れませんので、過去にご紹介した以下のブログ記事をご参照いただければと思います。

RIPE 80カンファレンス(2020年5月開催)

当初、ドイツ・ベルリンでの開催が予定されていましたが、全期間を通してオンライン会議システムのZoomを利用して開催されました。

これまでは、5日間かけて開催されていましたが、今回は、1セッションの時間を90分から45分に短縮して3日間で全てのプログラムを実施するよう変更となっていました。また、これまでのRIPE カンファレンスで恒例となっていたRIPE ディナーも開催されていました。参加者自身で調理できるよう事前にディナーのメニューが公開されるなど工夫が凝らされているようでした。

RIPE80とRIPE79のプログラムの比較

議論を行うセッションではこれまでも、提案内容の説明や議論が一通り終わると、セッションの進行を務めるチェアがその場で参考のための賛否の確認を行うことがありました。しかしながら、これはRIPE のポリシー策定プロセス上では定められていない対応です。提案に対する賛否の確認は、メーリングリスト上で実施することが、RIPE のポリシー策定プロセスで定められています。

発表時の模様も見慣れた画面になりました

今回の会期中は、チェアから賛否を確認することはなく、どのように確認を行うかを知ることはできませんでした。参加者からのコメントや議論となる場面は少なく、賛否を確認するまでもなかったのかもしれません。オンライン開催は、運用する側、参加する側共に、議論の場の雰囲気をつかみにくいのではないかとも感じました。

参加者がQ&Aの機能を利用して質問を書き込むと、事務局スタッフが読み上げ、発表者が回答します

ARIN 45カンファレンス(2020年6月開催)

当初、米国ケンタッキー州・ルイビルでの開催が予定されていましたが、全期間を通してオンライン会議システムのZoomを利用して開催されました。

通常2日間開催されるARIN カンファレンスは、今回も2日間の開催に変更はありませんでした。しかしながら、各種アップデートの発表のいくつかは割愛され、ポリシー提案に関する議論とARIN 会員向けのセッションに多くの時間が充てられていたようでした。

投票機能の説明はありませんでしたが、各機能の使い方が詳細に説明されていたのが印象的でした

ARIN のポリシー策定プロセスでは、ポリシーの変更にあたっては、コミュニティのサポートを必要としています。サポートの判断は投票によって決めると定められているため、何らかの方法で投票が行われるものと想像していました。

投票機能を利用して、提案内容の賛否を確認しているところです。賛成、反対、どちらかを選択する必要があります(投票しない、という選択肢もあります)

今回のARIN 45では、Zoomの投票機能を利用していました。投票機能に不慣れな参加者も多かったようで、スマートフォンを利用している、ブラウザのポップアップ禁止機能が有効になっている、などの理由で投票画面が表示されなかった、とクレームをあげる参加者もいました。

これまでのARIN カンファレンスでは、制限時間いっぱいまでマイクの前に人が並び、様々な視点からコメントを出していくなど、積極的に議論が行われていました。オンライン開催となったからといってこの傾向に変わりなく、提案に対して想いを持つ参加者が声をあげ、納得いくまで議論を行っていました。


話をAPNICに戻します。APNICではこれまで、提案に対して参加者がどのように考えているかを確認できるよう、Conferと呼ばれるシステムが用意されています。提案に対する賛否を明らかにして、プロセスを先に進めるかどうかをチェアが判断する際に参考とすることを目的として、このシステムが設けられました。完全オンライン開催にあたって、Conferがこれまで以上に活用されるのか、それともARIN ミーティングのような、アプリケーションに付属する投票の仕組みを利用するのか、いずれしても、コミュニティの声を可能な限り拾えるような仕組みとなることを期待しています。

Conferの画面はこんな感じです

JPNICにおいても、JPOPF運営チームが中心となって、オンライン開催時の提案に対する賛否の確認方法について検討が始まろうとしています。IP-USERSメーリングリスト等でも報告やご案内があるかと思いますので、ご注目いただければと思います。

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