IPv4アドレスの割り当て先組織のご担当者を探しています ~APNIC 50での話題から~
ip_team IPアドレス 他組織のイベント今回のAPNIC 50カンファレンス(以下、APNIC 50)では、どのセッションでも新型コロナウイルス感染症関連の話題が多かった印象ですが、IPアドレス・AS番号の管理に関するAPNICの現在の取り組みについてもご紹介します。
APNICではおよそ2年ごとに、APNIC会員やAPNIC地域内で活動されている皆さんに対して、アンケート調査を実施しています。ちょうどAPNIC 50開催のタイミングにあわせて、2020年に実施したアンケートの結果が公開されています。アンケートにご回答いただいた方やアンケート結果にご興味のある方は、ぜひご覧ください。
- APNIC 50 AMM2での発表資料:2020 APNIC Survey
前回2018年に実施したアンケート調査では、IPv4アドレスの不足に対してAPNICができると思われる取り組みは何かという質問に対して、多くの回答者が「未利用となっているIPv4アドレスの回収や再利用」を挙げていたとのことでした。(以下の発表資料14ページ目参照)
- APNIC 46 AMM1での発表資料:APNIC 2018 Survey Results
この結果を受けてAPNICでは、自身が管理するIPv4アドレスについて現在の状況の確認を進めています。APNICが管理するIPv4アドレスのうち、経路情報が広告されていないIPv4アドレスに関しては、割り振り/割り当て先としてAPNICデータベースに登録されている情報を元に各組織へ連絡しているそうです。APNIC 50では、各組織への連絡状況について報告が行われていました。
- APNIC 50 APNIC Products & Servicesでの発表資料:Reclaiming unused IPv4
APNICにおいてもJPNICと同様に、APNICなどの地域インターネットレジストリ(RIR; Regional Internet Registry)によるIPアドレス分配を行う体制ができた以前に、interNICなどのIPアドレス管理組織から企業・学術機関などの各組織に割り当てられたIPv4アドレス(ここでは、歴史的PIアドレスと呼びます)の管理を行っています。
以下のAPNIC 17カンファレンスでの発表資料によると、/8(1600万アドレス)換算で3個程度あるそうです(ただし、この数にはJPNICをはじめとする国別インターネットレジストリ(NIR; National Internet Registry)管理下となっている歴史的PIアドレスを含む可能性があります)。APNICのポリシーでは、この歴史的PIアドレスのうち、経路情報の広告が確認できず、割り当て先組織に連絡が取れないものについて、所定の手順を経て回収し、回収された在庫としてAPNICが管理することと定められています。
これは、2004年2月に開催されたAPNIC 17において議論され、コンセンサスに至った結果が反映されているものです。
- APNIC 17 policy SIGでの提案内容:prop-017: Recovery of unused address space
- APNIC 17 policy SIGでの発表資料:Recovery of unused address space
APNIC 17での提案内容では、JPNICをはじめとするNIRでの実装は、各NIRで判断を行うこととなっていました。そのため、APNIC 17での結果を受けて、JPNICでは、2004年7月に開催された第6回JPNICオープンポリシーミーティングにおいて、JPNIC管理下で割り当てが行われている歴史的PIアドレスについて、APNICと同じ内容を適用する提案が行われました。
JPNICオープンポリシーミーティングでは、多くの参加者からご意見をいただきました。APNICと同様の内容を実装するよりも先に、歴史的PIアドレス・AS番号の割り当て先組織を明確化する必要があるとの結論に至りました。その後、2006年12月に開催された第11回JPNICオープンポリシーミーティングでの提案を経て、2006年から2010年3月までの4年間にわたり、割り当て先組織明確化の取り組みを実施しました。
- JPNICからのアナウンス
歴史的PIアドレス割り当て先組織明確化完了のお知らせ(2009年3月11日)
AS番号割り当て先組織明確化完了のお知らせ(2010年3月23日)
話を現在のAPNICの取り組みに戻します。上記はAPNIC 50の発表資料から抜粋したものですが、経路情報が広告されていない歴史的PIアドレス(Unadvertised IPv4 typeがhistoricalのもの)については以下のような状況になっているとのことでした。
・割り当て先組織に連絡が取れた、または連絡が取れないアドレス:230万アドレス(/11+/14程度)
・返却の申し出があっアドレス:110万アドレス(/12程度)
JPNICからAPNICの担当者に個別に確認したところ、APNICからの連絡の際には、以下のような電子メールを送信しているそうです。一通り連絡は終了しており、現在は連絡が取れない組織へのフォローアップを続けているそうです。
このブログ記事をご覧になられた方で、APNICからのメールが届いた方がいらっしゃれば、APNICにお早めに返信するようお願いいたします。APNICでは日本語での対応が可能なスタッフが在籍していますので、英語での返信でなくとも構いません。JPNICでも、APNICへの連絡のお手伝いが可能かと思いますので、IPアドレス担当までご遠慮なくお問い合わせ・ご相談ください。
APNICからの連絡を受けた各組織において、該当のIPアドレスの継続利用が必要な場合には、以下のWebページに記載されれている流れで今後の手続きをお取りいただくことになります。
- APNIC Webページ:Manage historical resources
APNICとの間でIPアドレスの管理に必要な契約の締結や、必要な費用のお支払が主な手続きです。各組織において希望される場合には、JPNIC管理下で該当のIPアドレスを継続利用いただくことも可能としています、その場合にも、一部の手続きはお取りいただく必要がありますので、APNICと相談いただければと思います。
APNICの手続きでは、IPアドレスの割り当てを受けた経緯をまとめて提出する必要があるそうです。歴史的PIアドレスの割り当てが行われたのは主に1980~90年代前半ですが、JPNICにおいて割り当て先組織明確化の取り組みを行った2006年~2010年時点でも、割り当て先組織の状況が不明なケースや、当時の担当者の退職等によりIPアドレスの割り当てを受けた経緯が不明のケースも多くありました。当時の事情を知る担当者の退職などもさらに増え、各組織で保管する割り当ての記録の散逸や廃棄なども想定できることから、APNCにおいても一刻も早く、歴史的PIアドレスの割り当て先組織の明確化を完了させる必要があると感じました。
なお、該当のIPアドレスは利用されておらず継続利用が不要な場合には、IPアドレスの割り振り/割り当て先に関する情報をAPNICデータベースから削除のうえ、APNICへ返却されます。返却されたIPアドレスは、経路情報の広告状況を一定期間モニタリングするなどの所定のプロセスを経て、新たに割り振り/割り当てを希望する組織のための在庫として活用されることになります。
以下のAPNICのWebページによると、APNICが管理するIPv4アドレスの99.2%が割り振り/割り当て済みの状況にあるそうです。この99.2%の中には、「割り当て先組織に連絡が取れないアドレス」「返却の申し出があったアドレス」も含まれています。今回の取り組みの結果、利用可能な在庫がどの程度増えるのか、JPNICでも関心を寄せています。
- APNIC Webページ:IPv4 exhaustion