IGF 2021の準備状況
dom_gov_team インターネットガバナンス 他組織のイベントIGF(Internet Governance Forum)関係者の間ではすでに、本年(2021年)12月6日から10日にかけて開催されるIGF 2021に向けて着々と準備が進められています。さまざまな領域にわたるため全部はカバーしきれていませんが、本稿ではそのうちの主要と思われるものをご紹介します。
IGF 2021開催形態
IGF 2020は新型コロナ感染症パンデミックのため完全オンラインで開催されましたが、IGF 2021はオンラインと現地開催(ポーランド、カトヴィツェ)のハイブリッド形態で開催されることになっています。新型コロナ感染症の収束状況によって現地開催への参加が開催地ポーランドの人々が中心となるのか、世界各地から参加可能な人が集まるのか、いろいろな可能性が考えられますが、先日よりIGF事務局およびホスト国(ポーランド)政府より現地参加かオンライン参加かを問うアンケートがなされており、本稿執筆時の回答統計では現地参加が180名程度、オンライン参加が50名程度となっています。
課題領域
2020年の振り返りアンケート結果などを考慮して、マルチステークホルダー諮問グループ(Multistakeholder Advisory Group; MAG)が次の課題領域を定めました。
- 主要課題領域(成果に焦点):プログラムの6割が割り当てられる予定
- 経済的および社会的包摂および人権
- ユニバーサルアクセスおよび意義のある接続性
- 新興および分野横断領域(議論指向):同4割が割り当てられる予定
- 新興規制領域
- 市場構造
- コンテンツ
- データ
- 消費者/利用者の権利
- 環境における持続可能性
- 包摂的なインターネットガバナンスエコシステムおよびデジタル協力
- 信頼、セキュリティ、安定性
- 新興規制領域
MAG会合およびオープンコンサルテーション
毎年開催されるIGFのプログラム/セッションは公募され、MAGがプログラムの選定を行います。メンバーはマルチステークホルダーから構成され、アジア太平洋地域からはインド、ネパール、シンガポール、中国、フィリピンの方が選出されています。日本は2023年のホスト国ということで日本政府からメンバーが参加しています 。IGF 2021に関してこれまでに開催されたMAG会合は以下の通りです 。
1. 2020年12月15日開催
MAG議長が再任され、2021年ホスト国ポーランドからKrzysztof Szubert氏があいさつ後、各メンバーが自己紹介し、事務局がIGF 2020のまとめを行い、今後のスケジュール、BPF(ベストプラクティスフォーラム)など年間を通じて進行するプログラムについての紹介、質疑応答が行われました。
2. 2021年1月27日開催
- 2021年スケジュール案への更新のレビュー
- BPF提案の概要と基準の承認
- Discussion on MAG作業部会(WG)に関する議論
- デジタル協力に関する状況報告
3. 2021年2月9日開催
- IGF 2020の振り返り
- IGF 2021のプログラム構成・構造と設計の最終化に向けた次の歩み
4. 2021年2月22日から24日開催:オープンコンサルテーション(22日)およびMAG会合(23~24日)
- IGF 2020のフィードバック共有
- IGF 2021向けの提案およびテーマ案の紹介
- 課題によって促進される取り組み方法によることとする
- 開始までの段階分け案の紹介
- オンライン参加プラットフォーム:Zoom Webinarは参加者間の交流ができないので使わないことが勧告された
- セッション間活動の概要が紹介
- 各MAG WGの紹介
- 戦略に関するWG (WG-Strategy)
- 外部への働きかけを行うWG (WG on Outreach and Engagement)
- 多言語化WG (WG on Language)
- コミュニケーションWG (WG on commuications)
- ハイブリッド開催形態に関するWG (WG-Hybrid)
5. 2021年3月9日開催
- 課題とテーマについて議論
- 会議開催形態:オンラインと現地会場のハイブリッド形態が提案された
6. 2021年3月23日開催
- 課題領域が定められた(前述)
- 各課題領域向けにWGを設立
- 会議形態が以下の2フェーズになることが共有
- 準備フェーズ(6月15日から12月1日)
- 第16回IGF会議(12月6日から10日):ハイブリッド開催
7. 2021年4月6日開催
- 6月のオープンコンサルテーションおよびMAG会議はオンラインで開催
- IGF 2020に関するメッセージは事務局で翻訳中
- 各課題領域について課題チームを設立したが進捗がはかばかしくない
- NRIがIGF 2021準備プロセスへの寄与に関心を持っており、どのような関与が期待されるのか明確化を望んでいる
- 環境に関するポリシーネットワーク(PNE)がほぼ設立された
8. 2021年4月15日開催
- 各課題チームを代表してMAGメンバーが概要を説明
- 従来のパネルディスカッション、ディベート、円卓会議(60~90分)に加え、短時間セッション/ライトニングトーク(30~45分)を追加する可能性
- セッション並行同時開催に関する検討が実施
9. 2021年4月20日開催
- ホスト国であるポーランドが国連加盟国のデジタル大臣会合への招待状を発送
- ホスト国はMAGメンバーに対し、各国のCOVID-19に関する状況(渡航制限やワクチン接種状況)について連絡を要請
- IGF事務局より、PNEに関するマルチステークホルダーWGが立ち上がり4月28日に最初の会合を開催することが発表された
- IGF事務局が様々なセッション提案フォームを作成中
10. 2021年5月4日開催
- ポーランド政府より、IGF開催準備は予定通り進捗している旨報告あり
- IGF 2021参加形態アンケートはまだ回答受付中で、約200の回答があり、多くは現地参加を計画しているとなっている
- セッション提案およびIGF Village募集中(5月26日まで)
- ブース申し込み募集、リモートハブ登録の受付が開始
- 6月21日に第2回オープンコンサルテーションを開催し、翌22日にMAG会合の1日目、(ワークショップ選定の最終決断を下せるよう間を空けて)30日に2日目を開催
- IGF事務局による東南アジアIGFおよびベトナムIGF、エチオピアIGFの認知プロセス中
- NRIからの課題募集期間が5月26日まで延長
次回のMAG会合は5月18日に開催される予定で、次回(第2回)オープンコンサルテーションおよびMAG会合は6月21日から23日の予定です。
セッション間活動
IGFは年に1回きりのイベントではなく、年間を通じて議論した結果を発表する場という側面も持ちます。以下、活動の一覧を列挙します。
- ベストプラクティスフォーラム(BPF):5つのBPFに関する提案が提示:
- サイバーセキュリティ
- ジェンダーおよびデジタルの権利
- ローカルコンテント
- 環境データのガバナンス
- インターネットを持続的で容易に利用可能にするための行動
- ポリシーネットワーク(PN)
- 環境(PNE)
- 意義のあるアクセス(PN on meaningful access; PNMA)
- 動的連携(Dynamic Coalition, DC)
- アクセシビリティと障碍 (DCAD)
- ブロックチェーン技術 (DC-Blockchain)
- オンラインにおける児童の安全 (DCCOS)
- コミュニティの接続性 (DC3)
- インターネットの核心的価値 (DC-CIV)
- データと信頼 (DC-DT)
- データ駆動保健技術(DC-DDHT)
- DNSの問題(DC-DNSI)
- ジェンダーとインターネットガバナンス (DC-Gender)
- インターネットに接続されていない人々を接続するための革新的アプローチ (DC-Connecting the Unconnected)
- インターネットと職(DC-Jobs)
- 物のインターネット (DC-IoT)
- インターネットの権利と原則 (IRPC)
- インターネット標準、セキュリティおよび安全(DC-ISSS)
- インターネットの普遍性指標(DC-IUI)
- ネットワーク中立性 (DCNN)
- プラットフォームの責任 (DCPR)
- 図書館における公共のインターネットアクセス (DC-PAL)
- インターネットガバナンスの学校(DC-SIG)
- インターネット経済における島嶼開発途上国 (DC-SIDS)
- ジャーナリズムとニューメディアの持続性 (DC-Sustainability)
- インターネットガバナンスにおける若者の連携 (YCIG)
IGF 2023に向けて、日本からも議論内容や提案などの発信を行っていけるよう、2021年5月20日16時半より「IGF 2023に向けた国内IGF活動活発化チーム」のキックオフ会合を一般社団法人日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA)とJPNICの共催で開催します。ご興味のある方はぜひご参加ください。