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APrIGF 2021を一目見て

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アジア太平洋地域インターネットガバナンスフォーラム(Asia Pacific Regional Internet Governance Forum, APrIGF) 2021は現地会場がネパールのカトマンズとなり、オンラインやローカルハブとのハイブリッド形態で2021年9月27日から30日まで開催されました。昨年2020年は、元来は同じくカトマンズで開催予定だったのですが、新型コロナ感染症禍のため完全オンラインとなっていました。会場の客席すべてが映像となって見られたわけではないので、一部映った場面からの推測ですが、会場の参加者は主に地元ネパールの方が多い印象を受けました。

現地の筆頭ホストがInternet Governance Institute、そしてISOCネパール支部、Internet Exchange NepalそしてNepal Internet Foundationsがホストとして、加えてDotAsiaがAPrIGF事務局としてイベントを支えました。

プログラム

オープニングプレナリー

オープニングプレナリーでは、最初に開会式があり、会場での民族舞踊の披露の後、マルチステークホルダー運営委員会(MSG)議長のRajnesh Singh氏(ISOC)、APrIGF事務局のEdmon Chung氏(DotAsia)、ユースIGF代表のBea Soriano Guevarra氏、ローカルホスト代表としてManohar Kumar Bhattarai氏(Internet Governance Institute)、国連IGF事務局よりChengetai Masango氏、開催地のネパール政府情報通信省よりBaikuntha Aryal氏からそれぞれ挨拶がありました。

次いで、「Covid-19: ライフラインとしてのインターネット」と題してパネルディスカッションが行われ、Singh氏がモデレータを務め、Vint Cerf氏(録画メッセージ)をはじめとし、フィリピン政府保健省のEnrique Tayag氏、キルギスの市民社会よりNuria Kutnaeva氏など幅広いステークホルダーからなる6名のパネリストが登壇しました。Tayag氏からは遠隔医療の際のサイバーセキュリティ、ワクチン接種証明書などについて言及がありました。

プログラム

今回のAPrIGFは、多岐にわたるプログラムがバランスよく配置されたという印象です。特筆すべきと執筆者が考えるプログラムは次の通りです。

この他にも興味あるプログラムがいくつもあったのですが、その中でも、日本から提案されたショーケースプログラムとして、漫画に関する海賊版サイトと日本における表現の自由に関する問題について議論するセッションがありました。

ここでは、「S5. オープンかつ相互運用が可能なインターネットインフラがなぜインターネットが継続して成功するための鍵なのか」について簡単にご紹介します。

まずInternet SocietyのAdrian Wan氏(シンガポール)から、インターネットが成功したのはなぜかという考察が披露されました。次いで、ケーススタディとして某国政府がすべてのトラフィックを国内インターネットゲートウェイを通すことを義務付けた場合どのような影響があるか、という考察が発表されました。Charles Mok氏(香港)からは、オープンで相互運用が可能なインターネットの基盤がなぜインターネットの成功にとって重要なのか、と題して発表があり、これまでに何が変わったのか、何が足りないのか、インターネットにおける政府の役割の増大、断片化されたインターネット、などについて話がありました。YinChu Chen氏(台湾)からは、インターネットの美醜と題して、インターネットのポジティブな側面と、ネガティブな側面とについて発表があり、教育の重要性について強調されていました。George Michaelson氏(オーストラリア)からは、「砂時計再訪」と題して、直面する問題と解決策についての考察がありました。Pavel Farhan氏(タイ)からは、すべての人のための持続的で包摂的で信頼できるインターネットを促進するために、インターネットインフラに関する認識を持ってもらうようにするためには、どのように我々が協力できるか、ということに関して、能力開発と教育の重要性について示されました。その後、自由討論に移り、インターネットの今後について議論されました。もっと技術的な内容かと思っていたのですが、さまざまな領域にわたって議論されており、とてもIGF的な内容に仕上がったセッションだと思いました。

クロージングプレナリー

9月30日現地時間午後に開催されたクロージングプレナリーでは、まず「漂流ではなく帆走せよ:APrIGFにおけるマルチステークホルダーリズムと多様性」と題したオープンフォーラムが開催されました。モデレーターはAPrIGFのステークホルダーエンゲージメント委員会の共同招集者であるGayatri Khandhadai氏で、2名の講演者(Sylvia Cadena氏(APNIC Foundation)およびAnanda Raj Khanal氏(Nepal Telecommunication Authority))が発表した後、3名の仲裁者および参加者へのオープンな質疑応答が行われました。Cadena氏は、さまざまなステークホルダー、特にプライベートセクターからのIGF活動への参加を期待する、もし会社や上司などが障壁になるのなら説得するように、と述べていました。Khanal氏は、国別、地域別、グローバルIGFで同じ人が出席し同じことを言っている、これでは多様性があるとは言えない、と発言されていたのが印象的でした。

最後に行われた閉会式では、APrIGF事務局、若者代表、ローカルホスト代表としてBikram Shrestha氏( President, Nepal Internet Foundation)、国連IGFマルチステークホルダー諮問グループ(MAG)議長Anriette Esterhuysen氏、IGF 2023ホスト国を代表して日本から総務省国際戦略局 飯田陽一氏、ホスト国ネパール政府首相府長官Dhanraj Gyawali氏、今回でMSGチェアを退任するRajnesh Singh氏、次期MSG副議長Waqas HASSAN氏、次期MSG議長Anju MANGAL氏よりそれぞれ挨拶がありました。飯田氏からは、2023年のIGF日本開催への参加呼びかけと、そのために日本国内でもマルチステークホルダーによる活動が始まっている旨発言がありました。会議のチャットでは、久々のアジアでの開催となる日本でのIGF開催への声援が集まっていたようです。

統合文書(Synthesis Document)

統合文書とは、APrIGF 2014ニューデリーでのマルチステークホルダー運営委員会(MSG)で提案・議論され、毎年作成され改善されてきたものです。今年は包摂(inclusion)、持続性(sustainability)、信頼(trust)の3本柱で作成されています。基本的にはAPrIGF 2021の選考を通ったプログラム提案およびそのサマリー、派生した質問からなっているようです。各段落にはコメントを付けられるようになっており、コメント期間は9月22日から10月7日までとなっていました。予定では11月中旬に完成・公開されることになっています

フェローシップ

以前のAPrIGFでは本体と並行してYIGF(若者IGF)を開催していましたが、最近では本体内で毎年若者向け能力開発プログラムを実施しており、23名のフェローが選ばれそれに8名のメンターがついてフェローを手引きするという体制がとられました。クロージングプレナリーの一つ前には、フェローがAPrIGF全体のまとめを発表するプログラムもありました。

最後に

今年のプログラムは、先に挙げたもの以外にも人権、途上国開発、教育、アルゴリズムによる検閲、気候変動など多岐にわたりました。どのプログラムもよく練られていて、かつ多様なパネリストを揃えており、Internet Weekでいえばプログラム委員会に相当するMulti-Stakeholder Steering Group (MSG) および事務方の苦労がしのばれます。今後日本国内でのIGF活動をお手伝いするにあたって、なるべく広い範囲のステークホルダーの皆様に参加していただくのが望ましいので、容易ではないですが、APrIGFを参考にできればと思います。