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ARIN 48でのIPアドレス・AS番号分配ポリシーに関する提案ご紹介

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2021年10月19日(火)-20日(水)、28日(木)、11月4日(木)の4日間で、ARIN 48ミーティングが開催されます。ARIN (American Registry for Internet Numbers)は、北米とカリブ海周辺の一部地域を受け持つ地域インターネットレジストリ(RIR; Regional Internet Registry)の一つです。

今回のARIN 48ミーティングはZoomでのオンラインとミネアポリスでのオンサイトのハイブリッド開催となりました。オンサイトが用意されるのは2019年10月のARIN 44ミーティング以来です。初日・2日目は主にポリシーディスカッションを行い、3日目は各種選挙関係のプログラム、最終日はメンバーミーティングが行われます。

IPアドレス・AS番号の分配ポリシーに関する議論は、常日頃からメーリングリスト上で行われており、カンファレンスでのディスカッションへとつながっていきます。この形式はARINに限らず、すべてのRIRで採用されています。

今回のARIN 48ミーティングでは、6件のポリシー提案に関して議論・報告が行われます。

<Recommended Draft Policy(一次コンセンサス確認を行う段階のポリシー提案)>

  1. ARIN-2021-2: Special Use IPv4 Space Out of Scope for Purposes of Determining Waitlist Eligibility(待機リスト利用基準から除外する特殊IPv4アドレスについて)

<Draft Policy (一次コンセンサス確認を行う前段階の議論のみ行うポリシー提案)>

  1.  ARIN-2020-6: Allowance for IPv4 Allocation “Swap” Transactions via 8.3 Specified Transfers and 8.4 Inter-RIR Transfers (移転における「ブロック交換」の明文化)
  2. ARIN-2021-3:Private AS Number and Unique Routing Policy Clarifications(プライベートAS番号およびユニークルーティングポリシーの明確化)
  3. ARIN-2021-4:Clarifications to Sections 8.3, 8.4 and 8.5.6(セクション8.3 , 8.4, 8.5.6の明確化)
  4. ARIN-2021-5:Update ISP and End User References For 2022 Fee Schedule(ISPおよびエンドユーザーの2022年からの料金見直し)
  5. ARIN-2021-6:Remove Circuit Requirement(接続回路提供要件の削除)

各提案について以下提案番号順で簡単にご紹介したいと思います。

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ARIN-2020-6: Allowance for IPv4 Allocation “Swap” Transactions via 8.3 Specified Transfers and 8.4 Inter-RIR Transfers (移転における「ブロック交換」の明文化)

前々回のARIN46ミーティングから継続議論となっている提案です。ARINでは割り振り・移転を受けた後、12か月間は移転でIPv4アドレスを放出することができないことになっていますが、アドレス移転のために大きなアドレスブロックの一部を切りだすことを防ぐために、小さなアドレスブロックを受け取り、大きなアドレスブロックを移転に出すことを小さなアドレスブロックの割り振り後12ヵ月以内に行うことが実務の上で認められてきました。(アドレスブロックの分散回避のためのリナンバリングにあたります。)本提案ではこの「交換」が認められることを明文化しようというものです。メーリングリストでは新たな議論は見られていませんが、小さなアドレスブロックを受け取った後、12ヵ月以内に大きなアドレスブロックを移転しなければ、移転機能を制限するとしている部分に関して、小さなアドレスブロックを受け取ったタイミングから大きなアドレスを移転するまでも制限すべきという意見や、大きなアドレスを分割して移転することに関する是非を問う意見などが挙がっています。

 

ARIN-2021-2: Special Use IPv4 Space Out of Scope for Purposes of Determining Waitlist Eligibility(待機リスト利用基準から除外する特殊IPv4アドレスについて)

前回ARIN 47ミーティングで議論された提案で、今回コンセンサス確認が行われる提案です。4.4項(gTLDオペレーターへの割り振り)、4.10項(IPv6実装のためのIPv4アドレス割り振り)は”Special use”なアドレスと定義されています。しかし、待機リストに並ぶための要件では例外なく/20以上もしくは同等のアドレスを持つものは申込みできないとしています。これらの特殊アドレスも通常の割り振りアドレスと同等にカウントされているのです。本提案ではこれらの”Special Use”なアドレスを待機リスト利用資格の判断から除外しようというものです。メーリングリストでは賛成の意見が多く表明されています。

 

ARIN-2021-3:Private AS Number and Unique Routing Policy Clarifications(プライベートAS番号およびユニークルーティングポリシーの明確化)

ARIN 47ミーティングにおいて事務局はセクション5 (AS番号について)の記載で誤解を招く点が3点あると指摘しました。

①プライベートASとグローバルASの使い分けについて、今の文言では不明瞭である。(グローバルASはパブリックネットワークで利用される際に使用される。)

②独自のルーティングポリシーを要件として定義しているが、これが何に適用されていることを要件としているか明確ではない。

③ネットワーク設計プラン提出の必要が発生すること、独自のルーティングポリシー以外の要件があり得ることが明確になっていない。

この3点をポリシー上に明記しようというものです。メーリングリストでは文言の調整などの提案はされていますが、おおむねポリシーの導入に関しては好意的な意見が多く見られたような印象です。

 

ARIN-2021-4:Clarifications to Sections 8.3, 8.4 and 8.5.6(セクション8.3 , 8.4, 8.5.6の明確化)

8.3項(ARIN内での移転)、8.4項(RIR間での移転)ではAS番号のみでの移転が可能であることが今の表現では曖昧であるとして文言を修正、8.5.6項(v4アドレスの利用率について)では「追加アドレス」の文言がIPv4アドレスであることを明記しようというものです。ARINの特性らしいというか、特に8.5.6項の修正は無くても文脈上理解できそうですが、複数解釈の余地をなくそうと細かく定義するような提案です。内容的に大きな変更ではなく、メーリングリストでも反対の声は今のところ挙がっていません。

 

ARIN-2021-5:Update ISP and End User References For 2022 Fee Schedule(PAホルダーおよびPIホルダーの2022年からの料金見直し)

ARINではPAホルダー(JPNICで言うところの指定事業者)とPIホルダー(JPNICでいうところの特殊用途用PI,歴史的PIアドレスホルダー)で異なる料金表を基に維持料の計算が行われてきました。2022年1月1日より、これらを同一の料金表に当てはめ、計算を行い、同一のRSA(レジストリ利用規約)を適用するよう変更する提案です。料金表は現在PAホルダーに適用されているものと同額になります。ARINはこの変更で360万ドルの追加収益を得る見込みであるとメーリングリストで回答しています。既に料金表の改訂自体は理事会での決定事項であり、ポリシーを対応させるための変更であると語られていますが、さまざまな意見が飛び出すことが予想されます。注目して経過を見たいと思います。

 

ARIN-2021-6:Remove Circuit Requirement(接続回路提供要件の削除)

2.4項(LIRの定義)では、LIRは自社の提供するサービス利用者にIPアドレスを割り当てるとしているが、この文言ではIPアドレスのリースを行う事業形態を含んでおらず、利用率に反映できないと指摘しています。ここでは「LIRはネットワークユーザーへアドレスを割り当てる組織」と定義することでLIRとユーザー間に接続サービスがない、IPアドレスリース事業者もLIRに含まれ、リースしたアドレスは使用している(利用率を満たし、追加アドレスを取得可能な状態にできうる)と解釈することができるようにするものです。そもそもリースという使用形態は経路集約の観点と反する利用方法であり、BGPテーブルの混乱を招く手法であることを理由に反対意見が出ています。ARINとしてはリース事業自体は現状許容されている方法であり、使用率としてカウントするか否かが提案の争点としています。IPアドレスのリースが現実に行われている中で、定義のないままグレーゾーンで活動を行わせるよりは、しっかりポリシーで定義した方がよいのではないかとの意見も挙がっていました。とにかく意見が割れており、賛成するリース事業者等、リースに一定の理解はできるが提案の導入には懐疑的な人、リースという事業形態そのものを認めたくない人、と分けられた状態です。本会議ではどのような議論が行われるか注目したいと思います。

 

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以上が今回のポリシー提案になります。関心のあるポリシーはありましたでしょうか。

ARINミーティングは日本では深夜帯での開催となりますので、リアルタイムでの参加は難しいですが、資料や議事録の公開がありますので併せて確認いただけると面白いかと思います。

 

ARINなど、他のRIRでの提案がその後APNICでも提案されることもあり、JPNICは各RIRの動向に注目しています。ブログなどを通して皆様にも情報共有していきますのでぜひご覧ください。