IPv4アドレス、まだもらえますか?
ip_team IPアドレス JPNICからのお知らせJPNICのIPアドレス管理指定事業者の約7割が、IPv6アドレスの割り振りを受け、IPv6対応も着実に進んでいるとは思いますが、IPアドレスに関するJPNICによくあるお問い合わせの一つが、IPv4アドレスの新たな割り振りに関する内容です。

IPv4アドレスの分配ルールは、世界に五つある地域インターネットレジストリ(RIR; Regional Internet Registry)ごとに決められています。今回の記事では、RIRでの現在のIPv4アドレスの分配状況をご紹介します。
AFRINIC
AFRINIC(African Network Information Centre)は、アフリカを担当するRIRです。
AFRINIC地域の通常割り振りのための在庫は、2020年1月に枯渇しました。
現在は、102.192.0.0/11の在庫から、一度の申請で/22(1,024アドレス)が上限となるよう割り振り・割り当てを行っています。一組織あたりの申請回数には制限はありません。

AFRINICが公開する統計情報を調査すると、現在の在庫は、/24(256アドレス)ベースで約6,500ブロックあります。また、直近3ヶ月で約280ブロックの分配が行われているようです。このペースが今後も継続した場合には、約5年(2026年夏頃)でこの在庫も枯渇する計算になります。
引き続き、以下でご紹介するAPNICよりも在庫の枯渇時期が早くなる可能性もあります。
APNIC
APNIC (Asia Pacific Network Information Centre)は、アジア太平洋地域を担当するRIRです。
JPNICを含むAPNIC地域の通常割り振りのための在庫は、2011年4月に枯渇しました。
枯渇後、「/8相当の最後のAPNICにおけるIPv4未割り振り在庫」と定義された103.0.0.0/8から、一組織あたり/22が上限となるよう割り振り・割り当てを行っていました。2019年2月に分配ルールが改定され、一組織当たりの上限が/23 (512アドレス)へ変更となっています。

APNICが公開する情報によると、現在の在庫は/24ペースで約22,000ブロックあります。また、APNICでは現在、3ヶ月に約900ブロック程度の割り振り・割り当てが行われているようです。このペースが今後も継続した場合には、約6年後(2027年夏頃)には、この在庫も枯渇する計算になります。
2021年9月に開催されたAPNIC 52カンファレンスでは、このIPv4アドレスの分配サイズを変更する提案が行われました。この提案は、APNICの在庫数に応じて、一組織あたりの最大分配サイズを/23+/24から/24まで変更するものでした。

議論の結果、コンセンサスに至らず継続議論となっています。次回以降のAPNICカンファレンスにおいても議論が行われる可能性が高い状況です。
ARIN
ARIN (American Registry for Internet Numbers)は、北米とカリブ海周辺の一部地域を担当するRIRです。
ARIN地域の通常割り振りのための在庫は、2015年9月に枯渇しました。
現在は、ARINメンバーから契約解約等に伴って返却されたIPv4アドレスを再利用する形で、一組織あたり/22を上限とする割り振り・割り当てを行っています。
2021年10月時点で、割り振り・割り当てを行なうための在庫は枯渇しています。ARINから新たなIPv4アドレスの割り振り・割り当てを希望する組織は、ARINの用意する待機者リストに掲載され、割り振り・割り当ての順番を待つことになります。この待機者リストへの掲載は、現在割り振り・割り当てを受けているサイズが/20 (4,096アドレス)以下の組織に限定されています。/20を超えるIPv4アドレスの割り振り・割り当てを受けている組織は、IPv4アドレス移転を利用することになります。

待機者リストに掲載された組織への割り振り・割り当ては、3ヶ月に1度程度実施しています。直近では2021年10月1日に、その前は2021年7月8日に実施されています。9月末にJPNICで確認したところ、/22を希望する組織が153、/22を希望する組織が19、/24を希望する組織が91となっていました。
LACNIC
LACNIC (The Latin American and Caribbean IP address Regional Registry)は、ラテンアメリカとカリブ海地域を担当するRIRです。
LACNIC地域の通常割り振りのための在庫は、2014年6月に枯渇しました。
最後の在庫として残された/10(約420万アドレス)から、一組織あたりの上限が/22となるよう割り振り・割り当てを行っていましたが、2020年8月にこの在庫も枯渇しました。
現在は、LACNICメンバーから契約解約等に伴って返却されたIPv4アドレスを再利用する形で、一組織あたり/22を上限とする割り振り・割り当てを行っています。
2021年10月時点で、割り振り・割り当てを行うための在庫は枯渇しています。LACNICから新たなIPv4アドレスの割り振り・割り当てを希望する組織は、LACNICの用意する待機者リストに掲載され、割り振り・割り当ての順番を待つことになります。

返却されたIPv4アドレスは、返却から6か月後以降に再利用を可能としています。これまでの返却・再利用のペースから予測すると、この待機者リストに最近掲載された組織への割り振り・割り当てが可能となる時期は、2025年9月とされています。
RIPE NCC
RIPE NCC (Réseaux IP Européens Network Coordination Centre)は、ヨーロッパおよび中東地域を担当するRIRです。
RIPE NCC地域の通常割り振りのための在庫は、2012年9月に枯渇しました。
最後の在庫として残された185.0.0.0/8から、一組織あたりの上限が/22となるよう割り振り・割り当てを行っていましたが、2019年11月にこの/8在庫も枯渇しました。
現在は、RIPE NCCメンバーから契約解約等に伴って返却されたIPv4アドレスを再利用する形で、一組織あたり/24を上限とする割り振り・割り当てを行っています。
割り振り・割り当てを行なうための在庫が枯渇した場合には、RIPE NCCから新たなIPv4アドレスの割り振り・割り当てを希望する組織は、RIPE NCCの用意する待機者リストに掲載され、割り振り・割り当ての順番を待つことになります。

2021年10月時点で、割り振り・割り当ての順番を待つ組織は0となっており、割り振り・割り当てを行なうための在庫は枯渇しておらず、申請順に処理が行われているようです。

IANAにおけるIPv4アドレス在庫枯渇から10年が経過して、RIR自身が管理する在庫が枯渇するRIRも増えてきました。それぞれのRIRでは、メンバーに対してIPv6への対応を促しながらも、最低限必要となるIPv4アドレスの割り振り・割り当てを円滑に進めることができるよう工夫を凝らしているように思えました。
お問い合わせの前に今回の記事を参考にしていただければと思います。