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IGF 2021速報

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今週はインターネットガバナンスフォーラム(IGF) 2021が開催されています。本稿ではその速報をお届けします。

全体の構造

IGF 2021の全体テーマは“Internet United”です。そして2つの主要焦点分野と4つの新興・分野横断課題分野が、コミュニティからの意見を募ったのちに選定されました。

主要焦点分野

  • ‎経済的・社会的包摂および人権
  • 普遍的なアクセスおよび意味のある接続性

新興・分野横断課題分野

  • 新たな規制: 市場構造、コンテンツ、データ、および消費者/利用者の権利に関する規制
  • ‎環境の持続可能性および気候変動
  • 包摂的なインターネットガバナンスエコシステムとデジタル協力
  • 信頼、セキュリティ、安定性‎

これらの各々に対し、方策に関する質問例があらかじめ用意されており、議論の助けになるようになっています。250を超えるセッションはこれらに沿って分類されています。

開催形態

昨年のIGF 2020は完全オンラインでしたが、IGF 2021はハイブリッドとなり、予定通り現地会場(カトヴィツェ、ポーランド)において開催されました。ポーランド政府のウェブサイトには、IGF2021参加証を持参した人は隔離なしにポーランドに入国できる、とあります。筆者がいくつかセッションを視聴した限りでは、日本から現地入りした参加者はいなかったようですが、欧州内や米国から現地入りした参加者はいたように見受けられました。

開会式

2日目(Day 1)である12月7日の現地時間10時(日本時間18時)から開会式が開催されました。さすがに重なるセッションは一つもありませんでした。

最初に国連事務次長(経済社会局)Liu Zhenmin(刘振民)氏によるスピーチの後、アントニオ・グテーレス国連事務総長による録画によるスピーチが放映されました。次いでポーランド大統領アンジェイ・ドゥダ氏のビデオメッセージが放映されました。

大統領によるビデオメッセージ

ドゥダ大統領のスピーチには、プライバシー保護とオンラインセキュリティのバランスをどうやって見つけるか、教育などオンラインに移行している生活の多くの分野をどう再定義するか、ポーランドはそういった疑問を国際社会に対して何年も提示していること、中欧は多大な知的および経済的な可能性を有していること、などが含まれていました。

次いでポーランド首相マテウシュ・モラヴィエツキ氏が現地でスピーチを行いました。モラヴィエツキ首相のスピーチではCOVID-19パンデミック中にインターネットが重要な役割を果たし、ポーランドでは処方箋、医療機関間での患者の紹介、および診断書の電子化を促進したこと、これらが多くの人の命を救ったことについて触れ、世界レベルの解決策に向けた努力の必要性について述べました。

その後にはカトヴィツェ市長Marcin Krupa氏(ビデオメッセージ)、国際電気通信連合電気通信開発局(ITU-D)局長 Doreen Martin-Bogdan氏(ビデオメッセージ)、MTN Group(アフリカおよび中東を中心とした携帯電話サービス事業者)CEOのRalph Mupita氏(遠隔)、トーゴの大学生Kossiwavi Anna Akpawu-Kamassa氏、RIPE議長のMirjam Kühne氏(遠隔)、IGF 2021に関するポーランド共和国全権大使Krzysztof Szubert氏の順でスピーチがありました。次いで第16回国際ショパンコンテストで複数の賞を獲得し、起業家でもあるオーストリア人Ingolf Wunder氏によるピアノの演奏およびAIをはじめとする技術と芸術の関連などに関するスピーチがありました。

ピアニストによる素晴らしい生演奏がありました

印象に残ったセッション

まだ会期中ですが、印象に残ったセッションを一つ取り上げます。

Main Session: Policy Network on Environment ポリシーネットワーク(PN)とは2021年から新たに導入されたIGFを構成する仕組みで、コミュニティへの相談を行いながら専門家グループが年間を通じて議論し、結果をIGF本会議で報告するものです。2021年は環境に関するもの(本稿で扱います)と、意義のあるアクセス(meaningful access)に関するものの2つがありました。セッションでは、(スライドのないセッションがほとんどのIGFでは珍しく)スライドが投影され、勧告案が示され、それに対して議論が行われました。会場で参加したスピーカーは国連と各国政府関係者で、他のステークホルダーに属する参加者は全員遠隔参加でした。なぜIGFで環境か、ということですが、デジタル化が環境の改善に役立つから、ということのようです。1時間半のセッションに対し説明に使われたスライドは34枚ありましたが、その説明は3分の2程度で終え、残りはパネリスト間の議論および参加者との質疑応答に費やされました。

Dynamic Coalition (DC)をはじめとする、年間を通じて議論を行う枠組みはIGF開始時からあり、報告をまとめるのはDCでもやっていましたが、違いはPNではより具体的でアクション可能な勧告を生み出す、ということのようです。IGFは元来結論を出さず議論する、ということでしたが、デジタル協力、およびそれに含まれるIGF Plusの提案でより政策提言側に振る意図が見え、それに沿ったものの第一歩がPNだと言えるのではないでしょうか。

雑感

初日12月6日(Day 0)には、IGFウェブサイトに不具合が生じ、回復するまでに約7時間を要しました。2日目(Day 1)以降も、ときどき不具合が生じていたようです。全セッションがYouTubeに掲載されているので、視聴したいセッションの会場と日時が分かればIGFウェブサイトに関係なく視聴することはできますが、セッションの数があまりにも多いため、IGFウェブサイトを参照するようになっています。そのため、同サイトがダウンした時はYouTubeだけではナビゲーションが困難で、遠隔登壇者も登壇に必要な情報を得るのに手間取っていました。そのためか、ポーランド政府がセッションの一覧をExcelファイルによる表としてウェブページに掲載していました。

ウェブサイトには、3Dによる会場ナビゲーションが用意されており、バーチャルブースも用意されていましたが、かなりネットワークと視聴する端末の帯域を食うような印象がありました。

会議は現地会場+遠隔(ZoomとYouTube Live)で、国連公用語+ポーランド語の7ヶ国語の同時通訳付きで行われたため、映像・音響オペレーションは複雑を極めたと思われ、時折ミスはあったものの全体としては上手に進行していたという印象を持ちました。元来IGFは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)前からハイブリッドで開催されていましたが、今回はCOVID-19後初めて現地会場ありの開催となったため、特に質疑応答で現地と遠隔のバランスを取るのに苦心していたように思いました。そのあたりは、最終日10日金曜日のオープンマイクセッション(現地時間16:15~17:15、日本時間では11日土曜日0:15から1:15)で意見が出ると想像します。なお、11月には話者、モデレーター、オーガナイザー向けにトレーニングセッションが2回開催されています。

開会式では、現地会場はほぼ参加者で埋まっていたように見えますが、その他のセッションでは遠隔参加者が主なためか、現地会場はガラガラだったセッションもあったようです。

次回IGF 2022はエチオピアで、その次のIGF 2023は日本で開催されます。IGF 2023に向けて、国内IGF活動を盛り上げるべくJPNICは「IGF 2023に向けた国内IGF活動活発化チーム」に参加しています。皆様も同チーム会合および年明けに予定されているIGF 2021報告会へのご参加をぜひよろしくお願いします。