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IPv6 Summit in TOKYO 2021レポート

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2021年12月10日(金)に、今年も恒例のIPv6 Summit in TOKYO 2021が開催されました。今回も昨年に引き続き完全オンラインによる開催となりましたが、従来よりさらに充実した内容のプログラムが用意されました。

本稿では、今回のIPv6 Summitの各プログラムを紹介しながら、現在のIPv6の動向をお伝えできればと思います。


開会挨拶

開催の冒頭、来賓である総務省総合通信基盤局データ通信課長の柴山佳徳氏から、ご挨拶がありました。それに続いて、東京大学大学院情報理工学系研究科教授で、IPv6普及・高度化推進協議会専務理事でもある江崎浩先生に、開会にあたってのお話をいただきました。

江崎先生はデジタル庁のチーフアキテクト(CA)の立場から、今後のデジタル庁としての取り組みについて紹介した後、これまでのIPv6普及の道のり、そして今年フレッツ光ネクストのIPv6対応率が80%に到達したことを踏まえて、IPv4/IPv6の共存からいよいよIPv6シングルスタックへの移行に向けた道筋が見えてきているというお話をされました。

講演

最初の講演は、「IPv6シングルスタックによるアドレス利用拡大に向けて」というタイトルで、NTTドコモが今年度開始予定しているモバイルネットワークでのIPv6シングルスタック対応に関するものでした。コアネットワーク部分における対応に関して株式会社NTTドコモ ネットワーク開発部の國友宏一郎氏から、またISPとしての対応部分について同サービスデザイン部の山下孝史氏よりそれぞれお話しいただきました。2022年春のIPv6シングルスタック開始に向けた、設計上の課題や検討、試験の状況などについて、マルチレイヤーで対応する苦労などが伺えるお話だったと思います。

講演の二つ目は、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)サイバーセキュリティ研究所の井上大介氏による、「IPv6とセキュリティの切っても切れない関係」と題したお話です。これまでのIPv6セキュリティに関連したRFCの数々や、テストベッドによる攻撃手法の検証などの活動に関するお話を踏まえ、現在のIPv6セキュリティについて、アラートの検出やアドレススキャンの状況をご紹介いただきました。その上で、IPv6ネットワーク運用における考慮すべき点が明らかになってきたことから、対策として従来の境界防御という考え方からゼロトラストセキュリティを強調されていました。

パネルディスカッション

JPNICとIPv6普及・高度化推進協議会からの情報提供を挟み、メインセッションであるパネルディスカッションが行われました。

今回のテーマは、「見えてきたIPv4の終焉とニューノーマルIPv6」ということで、お馴染みの慶應義塾大学 環境情報学部教授で、IPv6普及・高度化推進協議会常務理事である中村修先生をパネルコーディネータに、下記の5名をパネリストとして迎えて議論が行われました。

・一般財団法人インターネット協会IPv6ディプロイメント委員会/アラクサラネットワークス株式会社 新善文氏
・一般社団法人 IPoE協議会/日本ネットワークイネイブラー株式会社 石田慶樹氏
・慶應義塾大学/株式会社ブロードバンドタワー 豊田安信氏
・IPv6社会実装タスクフォース 教育・テストベッドワーキンググループ/一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター 根津智子
・NTTコミュニケーションズ株式会社 宮川晋氏

まずは各パネリストがそれぞれの立場から、これまでのIPv6に関する取り組みや現在の状況について発表を行い、それを受けて議論が進められました。

トップバッターの根津は、IPv4アドレス枯渇への対応から始まった国内外のIPv6対応の普及促進活動のこれまでの動向を振り返るとともに、子育て中の立場から未来に向けたIPv6への期待を話しました。

石田氏からは、国内のIPv6普及における大きな原動力となったVNEのIPoEサービスの現状をご紹介いただくとともに、コロナ禍における課題として浮き彫りとなった集合住宅におけるIPv4インターネット接続の限界についてご指摘をいただきました。

続く宮川氏からは、総務省との連携によるエンタープライズのIPv6化についての取り組みをご紹介いただき、IPv4/IPv6デュアルスタックにせざる得ない現実の中でいかにIPv6シングルスタックを目指していくのかということを、実証実験の中でとりまとめるというお話がありました。

新氏は、石田氏から指摘のあった集合住宅におけるインターネット環境の実態をIPv4とIPv6の計測データに基づきご紹介なさり、IPv4インターネットの接続品質が著しく劣化している現状について問題提起いただきました。

そして豊田氏からは、WIDEプロジェクトにおける学生中心の若者によるIPv6シングルスタックネットワークの構築、運用についてご紹介いただきました。

議論においては、マンションインターネットのIPv6対応が課題であり、単身者用の集合住宅などでも在宅勤務やリモート授業の普及でIPv4だと全然つながらない状況があることから、早急な対策が必要であることが共有されました。

また、豊田氏をはじめとする若い世代が、IPv4を知らずにIPv6オンリーの世界で設計や運用を行っていくことで、新たなイノベーションが生まれることを期待するとともに、ご本人からもそういったことを目指していきたいという力強い発言をいただくことで、セッションは終幕となりました。


まとめ

今回の講演、パネルディスカッションも、IPv4/IPv6デュアルスタックからIPv6シングルスタックを指向する内容となっていました。

冒頭の江崎先生のお話の中や、情報提供セッションの中でも、IPv4アドレスの取引価格が1アドレスあたり$60に達している状況が触れられました。その他にも、講演やパネルディスカッションの中で、IPv4によるインターネット接続がかなり限界に近づいている状況も紹介されており、本格的にインターネットがIPv6に頼らないといけない状態が見えてきたのではないかと思われます。言い換えれば、パネルディスカッションのテーマの通り、「IPv4の終焉」が肌で感じられるようになってきたとも言えます。

最後に、イベント主催組織の一つである一般財団法人インターネット協会IPv6ディプロイメント委員会委員長の細谷僚一氏からのご挨拶にもありましたが、IPv6の普及活動が20年を超え、またIPv4アドレス枯渇から10年を迎えた今年2021年にふさわしい内容のIPv6 Summitであったと思います。