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JPNICのような組織(NIR)は他の国にもあるの??

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IPアドレスの分配は「インターネットレジストリ」が階層構造で管理を行っています。

JPNIC Blogでは、特定地域における管理を担う地域インターネットレジストリ(RIR; Regional Internet Registry)でのIPアドレスポリシー議論の内容などを発信してきました。

(参考:2021年のIPアドレス・AS番号分配ポリシーを振り返る)

RIRからのIPアドレス分配は2通りのルートが存在します。直接ローカルインターネットレジストリ(LIR; Local Internet Registry)に割り振り・割り当てが行われる場合と、国別インターネットレジストリ(NIR; National Internet Registry)を経由してLIRに割り振り・割り当てが行われるルートです。JPNICはこのNIRに当たる組織になります。今回はこのNIRとは何のために存在しているのか、どの国に存在してどのような活動をしているのか、簡単にご紹介したいと思います。

NIRはなんで必要?どこにある?

一見すると、RIR⇒LIRへの直接の割り振り・割り当てが可能な構造の中で、NIRは必須の存在ではありません。日本においてもアジア太平洋地域を管轄するAPNIC (Asia-Pacific Network Information Centre)から直接割り振り・割り当てを受けている組織は存在しています。そのような中でNIRの強みとしてはローカル言語でのサポートを受けられることです。APNIC等のRIRでも多言語サポートというのは注力しているところではありますが、管轄エリアが広い分、対応に時間を要することが考えられます。また、事務局所在国との時差の影響も考えられるでしょう。その分、NIRは国別で管理を行っているのでローカル言語でのサービス提供ができ、時差も発生しなくなります。RIRからしても負担を担ってくれる存在となっています。また、番号資源管理のみに限らず、各国におけるインターネット基盤技術の啓発・普及・教育などもNIRの役割の一つとして行われています。

一方で、どの国にもNIRがあるわけではありません。2022年現在、IPアドレス・AS番号のレジストリ機能を有するNIRが存在するのはAPNIC地域7ヵ国とLACNIC地域2ヵ国(ブラジルのNIC.brとメキシコのNIC Mexico)のみとなっています。これは北米(ARIN)やアフリカ(AFRINIC)は言語が比較的統一されていること、欧州(RIPE NCC)では言語に違いはあるものの、第二言語としての英語の定着が要因となっていると推察されます。

また一部の国はNICが存在しますが、彼らはIPアドレスレジストリとしての機能を有さず、ドメインレジストリとして活動している場合があります。シンガポールのSGNICやタイのTHNICはこれに当たります。

ここからはJPNICを除くAPNICのNIRをご紹介していきます。

APNICのNIRご紹介

CNNIC (China Internet Network Information Center)

CNNICは中国のNIRです。台湾はここに含まれません。会員数は約1,400組織となっています。(ここでいう会員数はJPNICの会員とは異なり、JPNICで言うところの指定事業者数に当たります。)1997年から活動している比較的古いNIRとなっています。APNIC地域内での発言力は強く、APNICの理事であるAPNIC EC(Executive Council)にはコンスタントにメンバーを送り出しています。現職ではFeng Leng氏(CNNIC :Director of Operation Management Department)がECを務めています。

 

TWNIC (TaiWan Network Information Center)

TWNICは台湾のNIRです。会員数は約300組織となっています。1999年から法人化され活動するこちらも比較的歴史の長いNIRです。TWNICでは近年IPv6アドレスやRPKI(Resource Public Key Infrastructure)の普及に力を入れてきました。IPv6アドレスでは2017年時点で国内普及率0.46%だったものをわずか4年で44.25%まで押し上げました。RPKIでは国内普及率98.71%を誇り、これは世界第5位の数字となっています。APNIC方面ではKenny Huang氏(TWNIC :Managing Director and CEO)が10年近くECとして在職されています。TWNICでは管轄圏内のポリシー策定に関して議論を行うOPM(Open Policy Meeting)が開催されています。こちらには日本のゲストスピーカーが呼ばれることもあります。

参考: 第36屆TWNIC IP政策資源管理會議

 

KISA (Korea Internet & Security Agency)

KISAは韓国のNIRです。会員数は約290組織でTWNICと同じくらいの規模感です。1999年に韓国ではKRNIC (Korea Network Information Center)が組織され、NIRとして活動を行ってきましたが、2009年よりKRNICはKISAの傘下に収められています。KISA自身はインターネット振興・サイバーセキュリティを司る公的機関であります。国内法に基づいて設立されている組織であり、職員は公務員の立場となります。KRNIC時代から考えるとCNNICやTWNIC同様に歴史の長い組織ではありますが、近年はAPNIC ECには人材を出しておらず、2009年以降関係者は就任していません。

 

VNNIC (Vietnam Network Information Center) 

VNNICはベトナムのNIRです。会員数は約620組織となっています。2000年に情報通信省の下部組織として組織されており、KISA同様職員は公務員となっています。IPv6の普及からIXの運営など多角的に活動を行っており、勢いのある印象を受けます。他のNIRとのコラボレーションも積極的に行っており、JPNICとは2013年にMoU (Memorandum of Understanding)を締結しています。また2018年にはJPNIC職員がベトナムを訪ね、交流を図ったりもしています。

 

IDNIC (Indonesia Network Information Center)

IDNICはインドネシアのNIRです。IDNICはAPJII (Asosiasi Penyelenggara Jasa Internet Indonesia:インドネシアインターネットサービスプロバイダ協会)の傘下で活動しています。会員数は約2,700組織とここまで出てきたNIRと比較すると圧倒的に数が多いです。2000年から活動を開始したIDNICですが会員数が大幅増加したのは2010年代に突入してからです。2010年時点では会員数が300強程であったところから、約10年で9倍の規模に拡大しています。成長を続ける中で、RPKIにおいては国内普及率64.3%と比較的高い数値を出すなど、技術の普及にも熱心に取り組んでいます。

 

IRINN (Indian Registry for Internet Names and Numbers)

IRINNはインドのNIRです。IRINNはNIXI (National Internet Exchange of India: 非営利IXP)のNIR機能を担当する部門であり、2012年から活動を行っています。会員数は約3,400と最大規模になっています。インドネシア同様近年著しい成長を見せている国であり、会員数は直近5年間で3倍になっています。APNIC ECにも積極的に送り込んでおり、直近ではRajesh Chharia氏(2016-2019)が務めています。インド国内向けとしてはオンデマンド技術セミナー、“NIXI Academy”やIPv6専門家による導入サポート“IP Guru”といったサービスを提供しています。

 


以上概要にはなりますが、NIRをご紹介してまいりました。JPNICは上流のRIRであるAPNICのみならずこれらのNIRとも協力・交流し、インターネットの発展に貢献できるように活動しております。普段皆様との関りはない海外のNIRですが、他の国にもJPNICのような組織があり、多様な活動を行っていることを覚えていておいていただけると、どこかで役に立つかもしれません。APNICカンファレンスの場でNIR職員とお話をしてみるのも、おもしろいかもしれませんね。

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