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ARIN 49でのIPアドレス・AS番号分配ポリシーに関する提案ご紹介

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2022年4月24日(日)-27日(水)の4日間で、ARIN 49ミーティングが開催されます。ARIN (American Registry for Internet Numbers)は、北米とカリブ海周辺の一部地域を受け持つ地域インターネットレジストリ(RIR; Regional Internet Registry)の一つです。

今回のARIN 49ミーティングはZoomでのオンラインとアメリカ、テネシー州ナッシュビルでのハイブリッド開催となります。初日はRPKI Roathonが、2日目・3日目は主にポリシーディスカッションを行い、最終日はメンバー関連のプログラムが行われます。

IPアドレス・AS番号の分配ポリシーに関する議論は、常日頃からメーリングリスト上で行われており、カンファレンスでのディスカッションへとつながっていきます。この形式はARINに限らず、すべてのRIRで採用されています。

今回のARIN 49ミーティングでは、7件のポリシー提案に関して議論・報告が行われます。

<Recommended Draft Policy(一次コンセンサス確認を行う段階のポリシー提案)>

  1. ARIN-2021-4:Clarifications to Sections 8.3, 8.4 and 8.5.6(セクション8.3 , 8.4, 8.5.6の明確化)

<Draft Policy (一次コンセンサス確認を行う前段階の議論のみ行うポリシー提案)>

  1.  ARIN-2020-6: Allowance for IPv4 Allocation “Swap” Transactions via 8.3 Specified Transfers and 8.4 Inter-RIR Transfers (移転における「ブロック交換」の明文化)
  2. ARIN-2021-3:Private AS Number and Unique Routing Policy Clarifications(プライベートAS番号およびユニークルーティングポリシーの明確化)
  3. ARIN-2021-6:Remove Circuit Requirement(接続回路提供要件の削除)
  4. ARIN-2021-7: Make Abuse Contact Useful(Abuse連絡先の利便性向上)
  5. ARIN-2021-8: Deprecation of the ‘Autonomous System Originations’ Field(AS Origin項目の廃止)
  6. ARIN-2022-1: MDN Clarification for Qualification(複数のネットワークを保有する組織の条件明確化)

各提案について以下提案番号順で簡単にご紹介したいと思います。

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ARIN-2020-6: Allowance for IPv4 Allocation “Swap” Transactions via 8.3 Specified Transfers and 8.4 Inter-RIR Transfers (移転における「ブロック交換」の明文化)

ARIN46ミーティングから継続議論となっている提案です。ARINでは割り振り・移転を受けた後、12か月間は移転でIPv4アドレスを放出することができないことになっていますが、アドレス移転のために大きなアドレスブロックの一部を切りだすことを防ぐために、小さなアドレスブロックを受け取り、大きなアドレスブロックを移転に出すことを小さなアドレスブロックの割り振り後12ヵ月以内に行うことが実務の上で認められてきました。(アドレスブロックの分散回避のためのリナンバリングにあたります。)本提案ではこの「交換」が認められることを明文化しようというものです。2022年2月5日に最新版が公開され、8.5.5.1項における大きなアドレスの移転を行わなかった際の移転制限に関して文言を変更し、8.5.5.1.1項における組織の利用率証明の提出義務を削除しました。メーリングリスト上では、IPアドレスの細分化を避けるポリシーとして好意的に見る声が多いように見受けられました。

 

ARIN-2021-3:Private AS Number and Unique Routing Policy Clarifications(プライベートAS番号およびユニークルーティングポリシーの明確化)

ARIN 47ミーティングにおいて、事務局はセクション5 (AS番号について)の記載で誤解を招く点が3点あると指摘しました。

①プライベートASとグローバルASの使い分けについて、今の文言では不明瞭である。(グローバルASはパブリックネットワークで利用される際に使用される。)

②独自のルーティングポリシーを要件として定義しているが、これが何に適用されていることを要件としているか明確ではない。

③ネットワーク設計プラン提出の必要が発生すること、独自のルーティングポリシー以外の要件があり得ることが明確になっていない。

この3点をポリシー上に明記しようというものです。2022年3月には文言の修正が行われ、Recommended Draft Policyになっていますが、会期タイミング上、今回は一次コンセンサス確認を行わないようです。文言に関して適切で簡潔であるかについて一部メーリングリスト上で議論が行われていましたが、おおむね提案そのものには反対は出てきていません。

 

ARIN-2021-4:Clarifications to Sections 8.3, 8.4 and 8.5.6(セクション8.3 , 8.4, 8.5.6の明確化)

8.3項(ARIN内での移転)、8.4項(RIR間での移転)ではAS番号のみでの移転が可能であることが今の表現では曖昧であるとして文言を修正、8.5.6項(v4アドレスの利用率について)では「追加アドレス」の文言がIPv4アドレスであることを明記しようというものです。ARINの特性らしいというか、特に8.5.6項の修正は無くても文脈上理解できそうですが、複数解釈の余地をなくそうと細かく定義するような提案です。純粋な明確化のみであることから、メーリングリストでの反対の余地もなく、このまま実装へ向かうものと思われます。

 

ARIN-2021-6:Remove Circuit Requirement(接続回路提供要件の削除)

前回のARIN48ミーティングから継続議論となっている提案です。2.4項(LIRの定義)では、LIRは自社の提供するサービス利用者にIPアドレスを割り当てるとしているが、この文言ではIPアドレスのリースを行う事業形態を含んでおらず、利用率に反映できないと指摘しています。ここでは「LIRはネットワークユーザーへアドレスを割り当てる組織」と定義することでLIRとユーザー間に接続サービスがない、IPアドレスリース事業者もLIRに含まれ、リースしたアドレスは使用している(利用率を満たし、追加アドレスを取得可能な状態にできうる)と解釈することができるようにするものです。加えて、2022年3月の最新版では他の項目での修正が必要な点が追記されました。1.2項(保全について)では番号資源の保全において、ARINはIPv6アドレスとASはフリープールから、IPv4アドレスは待機リストから供給されることを明記するように修正しています。また、4.1.8項(待機リストからの分配)では「必要性のあるものにだけ」に分配を行う。そして8.5.2 項(移転におけるアドレスの使用条件としてネットワーク運用での使用の場合に限定)は削除する、というものです。リースはRIRのみが行ってきた集約機能を勝手に行い、マージンを手に入れる不当なビジネスである、ネットワーク接続を提供しない(行わない)のにIPv4アドレスが必要であるというのは筋が通らないという声があり、多くの反対意見が出ています。一方でARINとしてはリース事業自体は現状許容されている方法であり、中立の立場としています。IPv4アドレス枯渇がほぼ完了している現在、リースを望む声が多い、中小企業では一括でアドレスの購入はできないがリースならキャッシュフローで運用でき、インターネットの促進につながるとの声が挙がっていました。双方に折れる気配がなく、本提案の採決には今後も非常に時間を要するかと思われます。引き続き議論の様子を追いたいと思います。

 

ARIN-2021-7: Make Abuse Contact Useful(Abuse連絡先の利便性向上)

現在、ARINではAbuse対応連絡先として電話番号・メールアドレスが提供されていますが、電話では自動応答、メールではフィルタリングや自動送信などまともに機能していない組織も多くみられるようです。よりAbuse連絡先を実用的なものとするためには、Abuse確認の際に利用されるWebページのURLを表示できるようにするべきであるとするのが本提案です。連絡先をURLにすることで、その先のWebページにて柔軟にコンタクト方法を選択できるとしています。メーリングリストではメールという形式はスパムも受信するなど不便な面があり、API等を実装すべきであるとの声も挙がっていました。一方でメール・電話以外の方法を一律に実装義務をもたせるのは困難であり、現段階でのこのようなポリシーの実装は反対であるとの意見も多くみられました。まずは電子メール連絡先の検証を行う方が良いとの主張もありました。全体的にはオプショナルな項目として追加する分には問題ないが、現在の電子メールから置き換える方式では考えにくいとの意見が中心となっているようです。2021年12月の最新版では任意での登録となっていることから、比較的受け入れられやすい提案になったのではないかと思われます。

ARIN-2021-8: Deprecation of the ‘Autonomous System Originations’ Field(AS Origin項目の廃止)

ARINでは割り振り/割り当て情報の項目にAutonomous System Originationsという項目があります。これは今日のRPKIシステムが作成される以前に活用されるべく作られた項目です。しかしこのデータを利用する為にはARINとBulk Whoisの利用契約を結ぶ必要があり、1日1回作成される数ギガバイトのXMLファイルから情報を抽出する必要があり、利便性は低いものとなってしまっています。今日では利用機会もほとんど無いことから、ポリシー文書から該当する項目(NRPM 3.5項)を丸ごと削除しようという提案です。

メーリングリスト上でもほとんどコメントが出ていないため判断しづらいですが、価値を見出している人はほとんどいないようであれば、このまま削除の方向で進められていくかと思われます。

 

ARIN-2022-1: MDN Clarification for Qualification(複数のネットワークを保有する組織の条件明確化)

現在のポリシー文書では移転/移管においてIPv4アドレスを受ける条件の一つとして、現在割り振りを受けているIPv4アドレスの80%以上を使用していることを証明することができた場合、/16までの移転を受けることができるとしています。しかし現在の文書では複数のネットワークを保有する組織に対応した記載になっておらず、この「80%」というのはまとめてなのか、各ネットワークで計算なのか、不明瞭になっています。これを明確にし、「各ネットワークで80%以上」であり、ネットワークを分けて判断することが妥当であることを証明することを求める旨を追記しようというものです。

メーリングリストではちらほらコメントが挙がっていますが、文書を複雑にするので、変更しない方が良いといった意見も見られました。現地でどのような話になるのかは注目したいと思います。

 

 

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以上が今回のポリシー提案になります。関心のあるポリシーはありましたでしょうか。

ARINミーティングは日本では深夜帯での開催となりますので、リアルタイムでの参加は難しいですが、資料や議事録の公開がありますので会議後に確認するだけでも意義があるかと思います。

 

ARINなど、他のRIRでの提案がその後APNICでも提案されることもあり、JPNICは各RIRの動向に注目しています。ブログなどを通して皆様にも情報共有していきますのでぜひご覧ください。

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