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サイバー主権、ITU、インターネット

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掲題の「サイバー主権」という言葉、一貫して中国政府がインターネットガバナンスの文脈で発し続けている言葉ですが、これに関連して、最近頻繁に話題に上ったり言及されたりするペーパーがあります。

 

China’s War for Control of Global Internet Governance
「グローバルなインターネットガバナンスのコントロールに向けた中国の戦い」

 

Justin Sherman氏という研究者によって7月22日付で公表されたペーパーです。何かの主張を展開するというよりも、中国政府がインターネットガバナンスに対してどういう姿勢を取ってきたかについて、最後7ページにわたる参考文書リストともに事実関係が列挙されており、資料価値が高いものとなっています。

 

サイバー主権とは、つまり各国政府がインターネットの統制にもっと発言力を持つべきであるという考え方で、グローバルな問題に関しては政府間組織であるITUが権能を持つべきだ、というのが一貫した主張です。JPNIC Webサイトの「国際機関とインターネットガバナンス」ページでは、2010年頃のITU IPv6グループ(ITUがIPv6アドレスの分配を行うという提案がなされた)、2012年の国際電気通信規則(ITR)改定などの大きな動きをまとめていますが、これら以外にも、全権委員会議や各セクター総会の成果文書に、例えば識別子管理に対するITUの関与などに関する決議文案が提出されることは珍しいことではありません。ICANN、ISOC、RIRsなどのインターネットの技術調整団体は、ITU-TやITU-Dのセクターメンバーとして議論の動向を把握して、対応に当たっています。また、インターネットの技術調整団体は民間の団体であり、それがレジストリやサービス事業者との契約で識別子の管理を行ったり、それが制定したプロトコル標準を事業者が自主的に採用するという流れに対して、何かを拘束したりする根拠も考えにくく、このような政府間組織における検討結果がインターネットの技術調整に影響を及ぼす可能性や度合いは小さいと考えられます。

 

また同様に注目を集めているのは、2022年9月に開催されるITU全権委員会議(Plenipotentiary Conference)で行われる、事務総長選挙です。例えば産経新聞が電子版で伝えています。

中露のネット統制防げるか 今秋のITU事務総局長選(冒頭部分以外は有料会員のみ閲覧可能です)

 

現事務総局長は中国人のZhao Hualin氏。候補には、米国の Doreen Bogdan-Martin氏と、ロシアのRashid Ismailov氏の2人です。上の記事の冒頭では、Ismailov候補が当選するとインターネットの国家統制が強まる可能性が高まると警戒していますが、現任のZhao氏の8年間の任期の状況、決議は事務総局ではなく加盟国によるものであることなどから、直接的な関連があるとまでは言えないところです。しかしながら、このような記事からは警戒感の高さがにじみでています。

 

中国とインターネットと言えば、2014年から開催されている世界インターネット大会烏鎮サミットから、「世界インターネット大会国際組織」が設立されたことが7月12日に発表されました。

世界互联网大会成立大会举行 黄坤明宣读习近平主席贺信并致辞
(英文記事もいくつかありますが、中国語からの翻訳が最も意味を取りやすかったので、これを示します。)

この「国際組織」の設立は、烏鎮サミットのイベントから継続活動への転換のようにも想像できますが、詳細は分かりません。烏鎮サミットには何回か参加し、JPNICブログでもレポートしています(第2回第3回第4回第5回)が、その中で中国のIT技術の目覚ましい進展を目の当たりにすると、今後インターネットや世界のデジタル化に対する中国の影響は、強まりこそすれ弱まることはないと考えられます。今後も注視していきたいと思います。

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