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光ネットワーク運用管理における標準化動向 ~新しいアーキテクチャ勉強会(光の巻)振り返り その1~

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2022年10月27日に開催の『モバイルネットワークと広帯域化に関する新しいアーキテクチャ勉強会』に登壇した、富士通株式会社の栃尾祐治さんに、振り返りを含めた「視点」をご寄稿いただきました。この勉強会では、KDDI総合研究所の宮坂拓也さんにもご登壇いただいて「Beyond5Gに向けた自律型ネットワークに関する標準化動向 」についてお話しいただいています。宮坂さんからの「解説と視点」については、後日このブログにて披露する予定です。


2か月ほど前の10/27(木)、『モバイルネットワークと広帯域化に関する新しいアーキテクチャ勉強会』という企画で、『光ネットワーク運用管理における標準化動向』というお題で話をさせていただきました。短時間でのプレゼンだったので、言いたいことを伝えられたのか自信がないので、このブログの場で、『あの時、とちおは何を伝えようとしたのか』をつらつら記していきたいと思います。当日の資料は以下にあります。

画像をクリックすると資料のPDFが開きます
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まず、伝えたかったのは、光ネットワークにおけるWDM(L0)の、アーキテクチャ上での表現の難しさ。WDMでネットワーキングというと、直感的にはさまざまな波長を使って自在に経路を通っていく、ルータ屋さんから見ると夢のような技術に見えるかと思うのですが(←実際、そんなことに憧れていまの会社にいるのも事実)、なかなかこれが一筋縄ではいかない。要因には、デバイス特性や光伝送特性に関わるものがあるのですが、それとは別にWDMのトポロジー表現が簡単なようでそうでない、と思っています。

これを、アーキテクチャの観点で表現しようとしたのが、ITU-T勧告G.807(ITU-T G.807(2020), Generic functional architecture of the optical media network)です。詳しいことはこの勧告読んで!と言いたいのですが、(私なりの)要点だけとお伝えすると、波長(中心波長とグリッド幅)だけではネットワーキングとして、表現不十分ということ。一方で、ファイバー構成やスイッチ(光Media)だけも、物理トポロジーだけは表現できても、光の通っていない状態では、TE的なトポロジー(帯域を伴ったネットワークリソース)は、また表現できていない。WDMをTEトポロジー的に表現するには、波長の取得性(availability)があって、さらに波長に帯域を生み出す変調技術(今の用語ではデジタルコヒーレント光伝送技術とも。資料ではOTSというホームベースみたいな図で表現しています)があって、ようやくWDMネットワークにおけるリソースとトポロジーが表現できるのです。

余談ですが、このITU-T G.807は、以前は光ネットワークのアーキテクチャ勧告として、G.872(ITU-T G.872(2019), Architecture of the optical transport network)に含まれていたのですが、非デジタルな箇所(すなわち光Media)は、独自かつ明確に定義すべきということで、分離独立されました。難産な勧告で、承認にも時間がかかった勧告でもありました。

ここまでで、かなり長い説明になりましたが、G.807を通して光ネットワーク(特にWDM)のアーキテクチャが定義され、これを用いて広帯域な通信サービスを享受できるということです。こういうことをp4-6でお伝えしていました。

アーキテクチャが固まれば、次は、モデル化(YANG module)です。p.7でも、さらりと記したのですが、光関連のYANGは多くの団体が、独自にYANGを定めてはいますが、IETF ではCCAMP WGでもG.807を考慮しながら、YANGの検討をしています。(例えば) またまた余談ですが、JPNIC/ISOC-JP主催のIETF 報告会で、一度はCCAMP WG『だけ』の報告の場を作りたいとは思ってはいたりはしますが、今のWG参加者が20名程度、しかもずっと日本人は私だけという現状を考えると…… (以下略)

最後に、『将来といまをつなげる要素』について。光ネットワークに関しては、さらなる広帯域化に向け、ファイバー技術・伝送技術・WDM技術など、さまざまな側面で研究開発が進んでいて、将来のICTインフラの土台として成長を続けてはいますし、標準化も進行中です。こういった進展があってこそ、どう使っていきたいかという検討を運用管理という側面でよく考える必要もあると思います。例えば、宮坂さんが話されたIntent Drivenも検討材料の一つに当たると思いますし、IOWN APNでもこういう考えでさまざまな検討を進めています。

大事なのは、継続的かつオープンに議論の場を作り重ねていくことなのだろうと思っています。かくいう、私自身、この分野でどうあるべきなのか、どう使っていきたいかずっと悩んでいる一人でもあり、これが、p.7-8で伝えたかったことであります。

よくよく考えたら、これからのネットワークがどうあるべきなのか、どう使っていきたいかという議論や検討は、光ネットワークに限らないネットワーク全般に当てはまる話なのだろうと考えます。そういう点で、新しいアーキテクチャ勉強会のような場を通して、さまざまな視点・観点であるべき姿を継続的に進め深められたらいいと思い、本ブログの締めとします。

 

■筆者略歴:栃尾 祐治(とちお ゆうじ)

富士通株式会社所属。主に次期トランスポートネットワーク(伝送網)に関わる仕様検討・調査、製品仕様規格検討を行う他、ITU-T、IETFなどの標準化活動に参画。ISOC-JPではインターネット標準化推進委員会(ISPC)委員を務める。


この勉強会の模様は、YouTube でも公開しています。このブログをお読みになって興味を持たれた方はぜひご覧ください。

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