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光ネットワーク運用管理における標準化動向 (自律型NWの巻)~新しいアーキテクチャ勉強会振り返り その2 ~

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2022年10月27日に開催の『モバイルネットワークと広帯域化に関する新しいアーキテクチャ勉強会』にて、KDDI総合研究所の宮坂拓也さんに「Beyond5Gに向けた自律型ネットワークに関する標準化動向 」をお話しいただきました。その宮坂さんに、振り返りを含めた「視点」をご寄稿いただきましたので、本稿でご紹介します。

この勉強会では、富士通株式会社の栃尾祐治さんにもご登壇いただき『光ネットワーク運用管理における標準化動向』についてもお話しいただいています。栃尾さんからの「解説と視点」については、すでに「光ネットワーク運用管理における標準化動向 ~新しいアーキテクチャ勉強会(光の巻)振り返り その1~」で寄稿いただいていますので、あわせてご覧ください。


前回の富士通 栃尾さんの振り返り記事より1か月ほど間が空いてしまいましたが、昨年2022年10月27日(木)、『モバイルネットワークと広帯域化に関する新しいアーキテクチャ勉強会』という企画で、『Beyond5Gに向けた自律型ネットワークに関する標準化動向』というお題で話をさせていただきました。栃尾さんの記事と同様に、本発表の振り返りを実施し、自律型ネットワーク実現に向けた今後の取り組みについて共有させてください。当日の資料はこちらです。

自律型ネットワークに関する標準化動向
自律型ネットワークに関する標準化動向・・・クリックするとPDFが開きます。

 

本発表では、次世代のモバイルネットワーク(Beyond5G, 6G)において求められる自律性の実現に向けて期待されている自律型ネットワーク(Autonomous Network)に関する最新動向を共有し、参加者の皆様と議論を行いました。自律型ネットワークとは「ネットワーク自身だけで調整したりコントロールしたりするネットワーク(※宮坂定義です)」であり、人間の運用者の手を介さずに、ネットワークが自分自身で制御するという、通信事業者としては夢のようなネットワークではないでしょうか。

そのような自律型ネットワークを実現するために、さまざまな標準化団体が活動を開始しております。本発表では、その一例として、ITU-T、TM Forum、3GPPにおける取り組みについて共有いたしました。本記事においても、3団体における活動を振り返ってみたいと思います。

まず、ITU-Tでは自律型ネットワークに関するFocus Group(Focus Group Autonomous Network: FG-AN) の活動が実施されております。FG-ANでは、自律型ネットワークのための、ユースケースやアーキテクチャに関して検討が進められており、FG-ANのWebサイトで一部の成果物が公開されております。

次に、通信事業者の運用管理に関する標準化団体であるTM Forumでは、自律型ネットワークに関して、運用管理システム・顧客管理システムの観点で標準化活動が進められております。特に私が重要視しているのはIntentの定義となります。Intentとは、顧客や運用者が「ネットワークに対して期待する状態・意図」を示す情報です。私は、自律型ネットワークを「ネットワーク自身だけで調整したりコントロールしたりするネットワーク」と定義しましたが、そもそもネットワークが「どのような状態」になるべきという情報(これがIntent)が無いと、何を目標に制御すべきかわからないので、Intentは必要不可欠な情報です。TM ForumではIntentのAPI化を目指しており、自律型ネットワークの実現には必要不可欠なAPIになると思われます。

Intentと自律型ネットワーク
図:Intentと自律型ネットワーク

3GPPにおいてもTM Forumと同様な活動がSA5において実施されております。SA5はモバイルネットワークの運用管理やオーケストレーションに関する標準化を実施しており、Release17から自律型ネットワークとIntentに関する取り組みが開始しております。TM Forumと同様にIntentをNetwork Resource Model (NRM)として規定しております。

最後に、自律型ネットワークの実現に向けた今後の取り組みについて整理します。初めに、標準化観点では、標準化団体間の整合性はやはり気を付けないといけません。モバイルネットワークはさまざまなネットワークやシステムで構築されており、それぞれに標準化団体が存在します(3GPP, O-RAN, IETF, TM Forum, ETSI…)。特にIntentの記述方法に関して、各標準化団体間で整合性を担保することで、モバイルネットワーク全体でIntentを共通に管理することが可能となります。

また、人間の運用者ではなくシステムでIntentをもとにしたネットワーク制御を実施するために、AI/ML技術の導入が期待されております。最適なネットワークリソース配置方法の決定、ネットワーク障害の自動検知&復旧といったさまざまなユースケースが検討されており、機械学習や深層学習といった近年目覚ましい発展をとげたAI/ML技術の導入が求められております。本記事では詳細内容について述べませんが、2023年1月に山梨県で開催されたJANOG51において「AI/MLによるネットワーク運用と自律型ネットワークに向けて」として詳細な発表を実施しておりますので、ぜひそちらをご覧ください。

本記事では、自律型ネットワークに関する標準化・今後の取り組みについて報告しました。しかしながら、最も大切なポイントは、我々ネットワークエンジニアの主戦場であるネットワークアーキテクチャにあると考えております。モバイルネットワークにおいても、IntentやAI/MLによる制御/運用が容易なネットワークアーキテクチャへの進化が、6Gでは求められるのではないでしょうか。6Gの商用化が期待される2030年にどのようなネットワークアーキテクチャが運用されているのか、期待を込めて本記事の締めにしたいと思います。

 

■筆者略歴

宮坂 拓也(みやさか たくや)

株式会社KDDI総合研究所所属。KDDI総合研究所におけるネットワーク運用に関する研究開発をリードしており、標準化活動としてはIETFやTM Forum等で主に活動を実施している。


この勉強会の模様は、YouTube でも公開しています。このブログをお読みになって興味を持たれた方はぜひご覧ください。

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