RIPE 86でのIPアドレス・AS番号分配ポリシーに関する提案ご紹介
ip_team IPアドレス 他組織のイベント2023年5月22日(月)~26日(金)の日程で、RIPE 86ミーティング(RIPE 86)が開催されています。RIPE NCC (Reseaux IP Europeens Network Coordination Centre)は、世界に五つある地域インターネットレジストリ(RIR; Regional Internet Registry)のうち、ヨーロッパおよび中東地域を担当するRIRです。
今回のRIPE 86はオランダ・ロッテルダムで開催されます。(RIPE NCCの事務局があるのはオランダ・アムステルダムですね。)
APNIC (Asia Pacific Network Information Centre)地域と同様に、RIPE NCC地域においても、IPアドレス・AS番号の分配ポリシーに関する議論は、メーリングリストのほか、オフラインミーティングの場でも行われます。
RIPE NCCのポリシー提案の進行状況は、Webサイトで確認できます。今回のRIPE 86で議論が行われるポリシー提案は2件です。
2023-01: Reducing IXP IPv4 Assignment Default Size to a /26
RIPE NCC では、IXP(Internet Exchange Point)向けに/15の専用割り振りプールを確保しています。IXPは、現在このプールから/24 (256アドレス)の割り当てを受けることができます。この割り当ては、IXPのピアリング用途にのみ使用できると、用途が制限されています。本提案は、このIXP向け割り当てのデフォルトサイズを/26に変更し、この利用率が50%を超えた場合にのみ、追加で/24まで割り当てを増やすことができるという形に変更しようというものです。また、IXPはこのプール以外からの割り当てが存在しないことを条件とします。IXPは/24以上のアドレスを求める場合、既存のこの/24分の割り当てを返却することで、/22までの割り当てをリクエストすることができます。
前回のRIPE 85において、RIPE NCC Registration Service ManagerのMarco Schmidt氏からIXP用プールは現在の割り当てペースで行くと2029年ごろには枯渇するだろうと発表しました。そうなると、新規IXP事業者は市場移転でIPv4アドレスを入手するほかなく、11,000USドル以上のコストがかかることが見込まれます。提案者がPeering DBを確認したところ、既存IXPの内、約70%のIXPが/26以下のIPv4アドレスで運用されていることが判明しました。現在の割り当てサイズは実際に必要な数より多く、浪費されている状態であると指摘しています。/26をデフォルトサイズにすることで、プールの寿命を4倍に伸ばすことができると提案者は主張しています。
MLでの議論では、当初そもそもIXP用のプールは廃止すべきではないかといった意見や、重要インフラであるIXPがギリギリの運用でインシデントを誘発する危険性があるのでこのような制限は良くないのでは、といった意見が出ていました。
いくつかの意見を受け、2023年2月に出された現版では/26を落としどころとして、多くの賛成の声が出ています。より効率的な運用が行われ、IPv4アドレスの分配が継続されることが望まれているようです。
2023-02: Minimum Size for IPv4 Temporary Assignments
RIPE NCCでは実験用IPv4アドレスについて、割り当て時に実験の詳細を公表すること、またその実験結果を無償でコミュニティに開示することを条件に払い出しています。これまではポリシー上にはそのサイズについて言及する文言はありませんでしたが、本提案ではデフォルトサイズを/24であることを明記し、必要に応じて/24以上のアドレスを割り当てることも可能であると記載しようというものです。このように記載することで、研究者は利用率要件を満たさなくても、必要に応じてIPv4アドレスを受け取ることができると提案者は主張しています。
本提案に関して、MLでは反対コメントはなく、賛成コメントがほとんどとなっています。事業者の関心が薄いという要因はありますが、基準が明確化され、研究用途の利用がやりやすくなることには賛同できるといったところのようです。
RIPEミーティングでは終了後アーカイブ・資料等の公開を行っています。ぜひチェックしてみてください。
JPNICブログでは、引き続きRIRのIPアドレスポリシー関連の話題をお知らせしていきます。その他の記事もぜひお読みください。