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APNIC 56でのIPアドレス・AS番号分配ポリシーに関する提案のご紹介

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2023年9月7日(木)~9月14日(木)の日程で、APNIC 56カンファレンスが開催されます。

 

開催地は日本・京都市の国際会館となります。日本でのAPNICカンファレンス開催は2015年、福岡市で開催されたAPRICOT2015/APNIC 39以来となります。会議への参加にはWebサイトからの参加登録が必要となりますので、参加を希望される方はご登録をお忘れなくお願いします。

APNICでは、ポリシーSIG (Special Interest Group)において、IPアドレス・AS番号の分配ポリシー(以下、ポリシー)に関する議論を行っています。平時はポリシーSIGのメーリングリストで議論や意見交換を行っています。ポリシーの改定を行うための提案はメーリングリストで議論されますが、年2回開催されるAPNICカンファレンス期間中は、オープンポリシーミーティング(OPM)と呼ばれる時間でface to faceでの議論を行います。この議論を通じて、提案の改善、コンセンサスの形成へ向けたやりとりが行われます。

今回のオープンポリシーミーティングでは、継続議論1点、新規提案が4点の計5点の提案に関して議論が予定されています。

  1. prop-148: Leasing of Resources is not Acceptable(IPアドレスのリース禁止)
  2. prop-152: Reduce the IPv4 delegation from /23 to /24(最大割り振りサイズを/23から/24へ変更)
  3. prop-153: Proposed changes to PDP(Policy Development Processの変更)
  4. prop-154: Resizing of IPv4 assignment for the IXPs(IXP向け割り当てアドレスサイズの変更)
  5. prop-155: IPv6 PI assignment for associate members(アソシエイトメンバーへのIPv6割り当て)

以下で各ポリシーの概要や、現在出てきているコメント、議論のポイントについてご紹介します。

prop-148: Leasing of Resources is not Acceptable(IPアドレスのリース禁止)

前々回のAPNIC 54から継続議論となっている提案です。

現在のポリシー文書では、IPアドレスの割り当ての際は直接接続であることを要件としていますが、明示的にリースを禁止する文言はありません。本提案では、リース禁止の文言を明記し、APNIC事務局はリースの疑いを調査・通報を受ける制度を設置し、判明した場合にはデータベースからの削除対応を求めています。

提案者は、リースは明示的に禁止されていないものの、これまでも許容されていないものと認識しています。APNICも、リースは許容されるものではないとのスタンスで、これまでも対応しています。しかし、実態としてリース事業者は存在しており、積極的な対処はできていませんでした。提案者は明示化することでこれらの対応整備を期待しています。

メーリングリストでは、前回の議論時から継続して以下の点が現在の提案内容では不明瞭であるとして議論がされています。

  • リースの定義・判断基準
  • 調査方法・通報制度の実装方法

前回提案から文言を変えてアップデートが図られていますが、慎重な議論が必要であるとみられており、コンセンサスには時間がかかる可能性があります。

prop-152: Reduce the IPv4 delegation from /23 to /24(最大割り振りサイズを/23から/24へ変更)

現在、APNICが保有する分配可能なIPv4アドレス(103/8)は全体の0.3%となっており、2024年中に枯渇することが見込まれています。この枯渇後はAPNICに返却・回収されたアドレスの再分配が行われる見込みです。インターネットの成長拡大にはIPv6アドレスへの移行が必用ながら、その実装のためにはIPv4アドレスは必要であると提案者は考えており、これから新たなメンバーとなる企業・組織のために、現在分配できるアドレスが枯渇した後は、現在の最大割り振りサイズ/23を/24に変更し、継続的にレジストリからの分配が行えるようにしようというのが本提案です。

現在の提案文書では、現在分配可能な在庫が枯渇したのちは、既存のメンバーへの分配は行わないとしています。しかし、この103/8のプールからの分配を現在受けていない、または/24のみ分配を受けているものの、将来的に受けたい、追加したいと考えるメンバーにとっては機会損失となってしまいます。こういったメンバーが実数としてどの程度いるのかは不明ですが、対象となる組織には分配可能である必要があると考えられます。また/24ではIPv6アドレスへの移行に必要な量として不十分であるとの意見もメーリングリストで見られています。

JPNICでも同様の対応が求められる提案となりますので、注目して動向を追いたいと思います。

 

prop-153: Proposed changes to PDP(Policy Development Processの変更)

APNICのPDP(ポリシー策定プロセス)では提案者がポリシー提案の提出後、OPMの4週間前までにPolicy SIGのメーリングリストへチェアがその内容を投稿するとしています。しかし提案者がポリシー提案をPolicy SIGチェアに提出する期限については明記されていませんでした。本提案では提案者の提案提出の期限をOPM5週間前と明記し、プロセスの明確化を図るというものです。

これまで不明瞭だったものを明確化するものですので、付随する文言へのコメントはあるものの、反対意見は見られません。

 

prop-154: Resizing of IPv4 assignment for the IXPs(IXP向け割り当てアドレスサイズの変更)

RIPE NCCで同様の提案が出ていたものがAPNICでも提案されました。APNICではIX事業者向けの割り当てとして/24の割り当てを行っています。しかしIXの事業規模によっては/24を持て余すといった事例があります。より効率的なプール運用のために、IX向けのデフォルト割り当てサイズは/26へと変更しようというのが本提案です。

RIPEでの提案とは少し内容を変えており、ピアリング数に応じて/24まで割り当てを受けることができるとし、さらに/22までの割り当ては利用率に応じて、リナンバリングを行うことで対応すると提案しています。

効率的な運用という意味で賛成の声が挙がっている一方で、リナンバリングを伴うことを前提とした制度作りには違和感を覚える方もいるといった様子です。

意見が分かれるところかと思いますので注目して議論を追いたいと思います。

 

prop-155: IPv6 PI assignment for associate members(アソシエイトメンバーへのIPv6割り当て)

APNIC52でprop-137として提案されたものが再度議論となっています。本提案はIPv4/IPv6アドレスをどちらも持たないAPNICメンバーカテゴリであるアソシエイトメンバーに対して、IPv6アドレスの割り当て(/48)を認めることで、学術機関や小規模組織でのIPv6実装を支援しようという提案です。

アソシエイトメンバーからどれほどのニーズがあるのか、実装の必要性といった部分が本提案の論点になってくるかと思われます。

 


以上5件のポリシー提案をご紹介してまいりました。今回のAPNIC56カンファレンスは日本・京都での開催となりますので皆様もぜひ現地で参加していただき、IPアドレスポリシーがどのように決められているのか、体験していただけたらと思います。また、カンファレンスでの議論結果に関してはJPNICのメールマガジン-JPNIC News & Views-でご報告を予定していますので配信をお待ちください。

 

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