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APNIC 62でのIPアドレス・AS番号分配ポリシーに関する提案のご紹介

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2026年9月4日(金)~10日(木)の日程で、APNIC 62カンファレンスが開催されます。開催地はインド・ムンバイです。

会議への参加にはWebサイトからの参加登録が必要となりますので、参加を希望される方はご登録をお忘れなくお願いします。

APNICでは、ポリシーSIG (Special Interest Group)において、IPアドレス・AS番号の分配ポリシー(以下、ポリシー)に関する議論を行っています。ポリシー提案はポリシーSIGのメーリングリストで公開され、議論を行い、MLでの議論を踏まえて、年2回開催されるオープンポリシーミーティング(OPM)で議論・コンセンサス確認を行います。この期間を通じて、提案のブラッシュアップが行われていきます。

今回のオープンポリシーミーティング(OPM)では、継続議論3件、新規提案が4件、計7件の提案に関して議論が予定されています。8/21現在、Prop-175までポリシー提案が受理され、MLでの議論フェーズに至っていますが、多くのポリシー提案が提出され、OPMの議論時間に限りがあるため、今回のAPNIC 62 OPMではProp-172までを取り扱います。本稿はOPMで議論される提案にフォーカスしてご紹介いたします。

  1. prop-164: Allocations of IPv6 Resources longer than a /32 with a nibble boundary alignment(IPv6最小割り振りサイズの変更)

  2. prop-165: Provision of IPv4 Address Space to IPv6-only Networks for Transitional Purpose(IPv6ネットワークへの移行を目的としたIPv4アドレスの割り振り)

  3. prop-168: Increase to maximum IPv4 delegations(IPv4アドレスの最大割り振りサイズ拡張)

  4. prop-169: Aligning IPv4 LIR Needs Assessment with Current IPv4 Delegation Policy(LIRに対するIPv4アドレスニーズ評価の見直し)

  5. prop-170: Nibble-Boundary Alignment for IPv6 Allocations(ニブルバウンダリを適用したIPv6アドレスの割り振り)

  6. prop-171: Operational Accountability for Abuse Contacts in Sub-Allocated Address Space(再割り振りされたIPアドレスのabuse対応責任の明確化)

  7. prop-172: Defining Internet Abuse through IP Addresses(IPアドレスを通じたインターネット不正利用の定義)

以下で各ポリシーの概要や、議論のポイントについてご紹介します。

prop-164: Allocations of IPv6 Resources longer than a /32 with a nibble boundary alignment(IPv6最小割り振りサイズの変更)

APNIC 60から継続議論となっている提案です。現在、APNICにおけるIPv6アドレスの最小割り振りサイズは /32と定められています。本提案は、この最小割り振りサイズを/40へ縮小しようとするものです。

現行ルールでは最小割り振りサイズが/32であるため、それより小さいサイズでの「割り振り」は行えません。一方で、実際に必要なサイズが/32より小さい組織が上流組織から/36や/40などで「割り当て」を受けた場合、そのアドレスを下流へ再割り当てすることはできません。/32の割り振りを受ければアドレス数が過剰になる一方、/32より小さいサイズの割り当てでは下流への再割り当てができないというジレンマが生じます。この問題を解消するため、/40という新たな最小割り振りサイズを設けようというのが本提案です。

前回提案時は新たな最小割り振りサイズを/36としていましたが、今回の変更でさらに小さな/40と変更されました。提案者は最小割り振りサイズを小さくすることにより、より正確なWHOISの登録が可能になると述べています。しかし、この点については、/40への変更との関係が必ずしも明確ではありません。現行ポリシーではIPv4アドレスの割り振りを受けている場合や2年以内の利用計画を示すことができれば容易に最小割り振りサイズ(/32)の割り振りを受けることができます。つまり/32より小さなアドレス空間で足りる組織であっても、現行ポリシーの基準でより大きな/32の割り振りを既に受けることができ、それを用いて再割り振り、割り当てを行えば登録情報は正確性を保つことができます。よってこの提案の実装はWHOIS正確性の向上に関する効果はなく、IPv6アドレスの分配効率に関わる提案となっています。その一方で、提案者は提案中で同時にニブルバウンダリ(4ビット)単位での割り振りや、スパースアロケーションの確保なども要求しており、このような管理性や連続拡張を重視する方策を見るに、効率性を重視したいわけではないようです。

必要なサイズに応じて、より細かく分配することはアドレス分配の効率性を上げることは可能です。しかし、IPv6アドレスはIPv4アドレスとは比較にならないほど広大なアドレス空間を持っています。そのためIPv6アドレスでは、アドレスの効率運用以上に、経路集成(ルーティング集約)の重要性が重視されるという側面があります。将来的に枯渇が見込まれるような状況ではない現時点で効率性を改善する必要性があるのかは不明です。

提案者の発想がどこまで共感を得られるかですが、IPv6アドレスポリシーの基本的な考え方に一石を投じる可能性のある提案であり、動向に注目したいと思います。

 

prop-165: Provision of IPv4 Address Space to IPv6-only Networks for Transitional Purpose(IPv6ネットワークへの移行を目的としたIPv4アドレスの割り振り)

APNIC 60から継続議論となっている提案です。現在、IPv4アドレス と IPv6アドレス は並行して運用されていますが、IPv4 アドレスの枯渇により IPv6アドレス への移行が進められています。その中で、IPv6-only のネットワークを構築しようとする組織は IPv6アドレス の取得基準を満たせても、IPv4アドレス の取得基準を満たせず、移行期に必要な IPv4アドレス が入手できない可能性があると提案者は指摘します。そこで本提案では、IPv6 アドレスの割り振り基準を満たした組織に対し、過渡期対応用として IPv4 アドレス /24 を割り振る仕組みを提案しています。

現時点では、 IPv6-only ネットワーク構築においてIPv4アドレス取得が実際の障壁となるような具体的な事例は確認できていません。しかし提案者は、将来起こりうる問題を見越して事前に整備しておくべきだとしています。事務局からの影響予測で懸念されている点として、IPv4 アドレスの利用目的をIPv6-only移行に限定する条件を設けており、目的に沿って利用されているかを確認する方法が明確でないこと、移行完了の判断基準や本ポリシーに基づく分配の終了規定が明確でないことが挙げられていました。その後MLでは提案者から以下のような明確化案が出ています。

目的内利用の確認について

申請者は「IPv6-only Deployment Declaration」を提出する。内容は以下とする。

  • IPv6-onlyの展開計画
  • IPv4接続を必要とする移行関連サービス
  • 申請するIPv4 /24の利用目的

事務局は申請時の宣言を基に判断し、必要に応じてIPv6-onlyの展開を示す裏付け資料を求めることができる。一方で、技術的な監査や継続的な運用監視は行わず、宣言をベースとした簡易的な確認にとどめる。これは4バイトAS移行期に2バイトASを申請する際のプロセスと同様の考え方である。

事務局による定期的なレビューは簡易なものとする。確認事項は以下に限る。

  • 関連するIPv6割り振りが引き続き有効であること
  • IPv6-onlyの展開が引き続き運用されていること
  • 分配されたIPv4資源が、移行目的のために引き続き必要であること

 

終了規定について

現在の提案文書では以下に定めており、これは有効であると考える。

  • APNICが、直前12か月間の平均割り振りペースに基づき、Final /8 Policyの下で分配可能なIPv4アドレス空間が6か月以内に枯渇すると予測した場合。

これに加えて、最後の/8プールから一定量を固定的に予約し、その閾値を下回った場合には新規分配を終了する方式も考えられます。提案者は、予測に基づく方式、固定予約量に基づく方式、またはその組み合わせのいずれが適切か、コミュニティに意見を求めています。

 

具体的な実装については、コミュニティ議論の余地が残されているため、さらに検討を重ねる必要がありそうです。

 

prop-168: Increase to maximum IPv4 delegations(IPv4アドレスの最大割り振りサイズ拡張)

APNIC 61から継続議論となっている提案です。現在、APNICにおけるIPv4アドレスの分配は、1組織あたり最大/23までと定められています。本提案は、この上限を/22まで拡大することを提案しています。あわせて、以下のような条件が設定されています。

  • 新規申請者に限らず、既存の契約組織であっても、保有する総IPv4アドレス数が/22未満であれば追加申請を可能とします。ただし、過去にアドレス移転によってアドレスを放出した実績のある組織は、追加申請の対象外とされます。追加割り振りを受けた組織については、すべての割り振りアドレスを対象として、追加割り振り日から5年間の移転を禁止する制約が設けられます。
  • 利用可能プールが枯渇した際に開放するため、/12をIPv6移行用の特別プールとして確保します。このプールから分配されるアドレスは移転を禁止し、不要となった場合にはAPNICへ返却することが求められます。

現在、IPv4アドレスは返却済みアドレスを再利用するプールから分配されています。このプールは、現在の分配ペースが維持された場合、2035年前後に完全枯渇すると予測されています。

提案者は、レジストリがこのアドレスを長期間ストックし続けるよりも、既存のニーズに応じて分配した方が有意義であり、その結果としてアドレス移転やリースの減少につながると主張しています。

しかし、この点については懐疑的な見方も残ります。現在APNICでは、アドレス移転を希望する組織をリスト化するサービスを提供していますが、このリストを見ると、/22よりも大きなアドレスサイズを希望する組織の方が多い状況です。また、対象となり得るAPNICアカウントホルダーが約15,000組織ある一方、/12の予約プールを確保した後の利用可能プール内のIPv4アドレス数は約7,600個の/24相当にとどまり、ML上で示された潜在的な追加需要の試算に対して、23%程度しかカバーできないと指摘されています。

また、本提案では追加割り振りを受けた組織に対し、全保有アドレスを対象に5年間の移転禁止を課していますが、事業環境は5年という期間の中でも大きく変化し得ます。その結果、必要なアドレス数が増減する可能性も十分に考えられます。この制限は、かえってアドレスの流動性を低下させ、割り振りを受けた組織がアドレスを死蔵する事態を招きかねないとの懸念があります。

レジストリでのストックをできるだけ引き延ばすよりも、リースといったレジストリを介さない不透明なアドレス流通を減らしたいという思想自体には、一定の理解を示すことができます。一方で、早期完全枯渇が、将来的に新規参入の障壁となる可能性を指摘する声もあり、本提案は賛否の分かれる内容となっています。

加えて、APNIC事務局が公表しているポリシー提案実装に伴う影響予測では、実装後数か月以内に既存の利用可能プールが枯渇する可能性が示されています。短期的な申請数の大幅増加も見込まれており、オペレーション上のリスク対策や人員補強が必要になる点についても懸念が示されています。

 

prop-169: Aligning IPv4 LIR Needs Assessment with Current IPv4 Delegation Policy(LIRに対するIPv4アドレスニーズ評価の見直し)

ポリシー文書6.2.1項では、LIRへの初期割り振り要件が記載されています。この中には「1年以内に少なくとも/23を使用するための計画の提出を求める」との記載があります。しかし、IPv4アドレスの割り振りは現在最大で/23、最小/24となっており、/24の割り振りを申請した際には実際に申請するサイズを上回る利用計画を示さなければならなくなり矛盾が生じてしまいます。本提案では該当箇所を「IPv4 割り振り上限に従い、審査対象となる IPv4 割り振りを1年以内に使用するための詳細な計画を示すこと。」と修正することで実態に即した文言にしようという提案です。

矛盾点を実態に即した形に修正するものであり、実際のアドレス分配への影響はありません。ML上でも賛同を得られていることからコンセンサスに向かうと思われます。

 

prop-170: Nibble-Boundary Alignment for IPv6 Allocations(ニブルバウンダリを適用したIPv6アドレスの割り振り)

IPv6アドレスの割り振りはその必要性を確認したうえで適当なサイズを1ビット単位(/30,/31,/32など)で申請できます。技術上問題はありませんが可読性や運用管理上はニブルバウンダリ=4ビット単位(/24,/28,/32など)が扱いやすいとされています。

本提案は運用上の負荷を減らすため、IPv6アドレスの申請の際にニブルバウンダリに沿った割り振りを希望することを可能とする提案です。あくまで希望制であり、リクエストがない場合は通常の1ビット単位での割り振りとなります。また、既存のニーズ評価の仕組み自体を変更するものではありません。一方、ニブルバウンダリをリクエストする際には、「長期的なIPv6アドレス計画」を提出する必要があるとしています。

現行ポリシーにおけるニーズ評価では、現在の需要だけでなく将来の必要量も考慮して割り振りサイズを決定し、不足した場合には追加割り振りを受けることができます。そのため、本提案で新たに示される「長期的なIPv6アドレス計画」が既存のニーズ評価とどのように異なり、ニーズ評価で正当化されたサイズを超えてニブルバウンダリまで割り振る根拠となるのかは、やや分かりにくい部分です。

長期的なアドレス計画が将来の需要を示すものであれば既存のニーズ評価と重複します。一方、アドレス設計や運用上の利便性を示すものであれば、それをニーズを超えるサイズの割り振りの根拠としてよいのかという論点が生じます。既存の要件との違いを整理し、本提案によって何を実現可能とするのか、より明確化する必要がありそうです。

 

prop-171: Operational Accountability for Abuse Contacts in Sub-Allocated Address Space(再割り振りされたIPアドレスのabuse対応責任の明確化)

WHOIS/RDAPにはネットワークの不正利用対応窓口「abuse contact」の項目があります。近年は”prop-125: Validation of “abuse-mailbox” and other IRT emails”が実装されその到達性確保が行われるようになりました。一方でその連絡が実際に責任主体へ届いているかまでは確認されていません。これによる対応遅延や、主体の不明さを排除するため、特にこの問題が起きているとされる再割り振りアドレスについて、原則を設けようというのが本提案です。再割り振りを行う場合に上位組織は以下いずれかの方法でabuseレポートが運用上の責任主体まで確実に届く経路を確保しなければならないとしています。

(a) 登録された abuse contact または IRT contact を、そのアドレス空間に責任を負う下位組織が直接運用する。

(b) 登録された contact を上位の資源保有者が維持する集中管理機能とする。ただし、その機能が、該当する下位の当事者を特定し、その当事者に abuseレポートを転送するための信頼できるプロセスを有していること。

(c) 正当な abuseレポートが、不当に遅延することなく、運用上の責任を負う当事者まで届くことを確保できるその他の方法。

さらにAPNICは各運用モデルのガイドライン策定を行うこととしています。

abuseレポートが責任主体へ正しく届くべきであるという考え方は共感できます。その一方で、到達性の向こう側、どのような運用がなされているかは外部からの検証が難しく、原則を設けたとしても、その実効性を外部から継続的に確認することは難しいように思われます。ガイドラインの策定であるべき姿を示す意味はあると思いますが、効果を判別できないものをどこまでポリシーに含めるべきか、議論の余地があると思われます。

 

prop-172: Defining Internet Abuse through IP Addresses(IPアドレスを通じたインターネット不正利用の定義)

先のprop-171につながる提案です。現行のアドレスポリシー内では「abuse」について定義する項目はありません。提案者はこの定義上の空白を埋め、番号資源コミュニティがabuseについて議論するための共通の基準を設けるとともに、将来的に資源管理責任について議論するための土台としたいとしています。

本提案で提案されているabuseの定義は以下の通りです。

“Internet Abuse through IP Addresses” とは、APNICアカウントホルダー に登録されている、または保有されている IPアドレスを、インターネットの セキュリティ、安定性、信頼性 に対して、技術的に害を与える方法で使用することをいう。また、資源保有者が実務上・運用上対応可能である違法行為を助長することも含む。

例)
・マルウェア の配布・ホスティング(ボットネット C&C を含む)
・DDoS の発信、増幅
・意図的または重大な過失による ルーティングレイヤ abuse(BGPハイジャック、未割り振り・予約済み・不正占有されたアドレス空間の使用など)
・上記を助長する目的で IPアドレスリソースを不正に取得・移転・再分配 すること
・フィッシング、詐欺、不正行為、正当な組織へのなりすまし等に使用される インフラストラクチャのホスティング

abuseの判断者はリソースホルダーであり、APNICにその裁定権限はない。

マルウェアやDDoS、BGPハイジャックなど技術的な不正行為はabuseとして判断しやすい一方で、特に「違法行為(unlawful conduct)」まで定義に含める場合、何が違法であるかは各国・地域の法制度によって異なります。「どの行為を違法行為として扱うのか」「どの法域の法律を基準とするか」といった判断をAPNICの番号資源ポリシーの中で扱うことは容易ではありません。

また、abuseの判断をするのはAPNICでなくリソースホルダーであるとしています。APNIC自身にはabuseを裁定する権限がないとされているため、リソースホルダーがabuseに該当しないと判断した場合に、その判断をどのように検証するのかという課題が残ります。レジストリが裁定者になる必要はありませんが、現案のままだと実効性は限定的となるように思われます。

本提案についても、今回のOPMで直ちにコンセンサスに至るというよりは、継続して議論を行い、abuseについて番号資源コミュニティとしてどう向き合っていくのかを議論し、形作っていくものになると考えます。

 


以上、7件のポリシー提案のご紹介でした。気になる提案があれば、ぜひAPNICのWebページを確認したり、実際にカンファレンスへ参加したりして、議論を追ってみてください。カンファレンスでの議論結果に関しては、JPNICのメールマガジン-JPNIC News & Views-でご報告を予定しています。皆様と現地会場でお会いできますことを楽しみにしております。

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