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News & Views Column:王様のいない世界を支えるもの

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過去にメールマガジンで配信したインターネットに関するコラムを、このブログでもご紹介しています。今回は2026年7月のメールマガジンでお届けした、LINEヤフー 鈴木 恒平さんのコラムを掲載します。ネットワーク運用や国際会議への参加、これまでの業務経験を通じて感じた、インターネットを支える「自律・分散・協調」について、コミュニティや対話の大切さとともに振り返っていただきました。


学生時代に携わったネットワーク運用や研究活動を通じ、インターネットの根底にある「自律・分散・協調」という概念に深く魅了されました。絶対的な王様が不在でも、共通のプロトコルでシステムが自律し、見事に協調する世界です。

JPNICの支援で参加させていただいたAPRICOT 2019では、この概念が技術だけのものではないことを知りました。国籍や立場の異なる人々が議論し、合意形成を図る。システムを繋ぐのがプロトコルならば、多様な人々を繋ぎ協調させているのは、オープンでフラットな対話と信頼関係から紡がれるポリシーです。そして、そのポリシーを生み出し育む土壌として、インターネットを支える人間とコミュニティが存在していることを肌身で感じました。

その後、ネットワーク機器ベンダーからキャリアをスタートさせた私は、顧客にネットワークの理想像を提案する立場にありました。やがて事業会社へ移り、大規模なインターネットサービスを自ら運用する立場となります。そこで求められたのは、技術的な理想像を描くだけでなく、費用対効果や実際の運用工数といった現実的な制約を見極める視点でした。提案する側から運用する側へ立場が変わると、同じネットワークでも見える景色は変わります。また、事業者同士も異なる立場を持つ以上、意見や優先順位が異なるのだということを、まざまざと感じるようになりました。

巨大なプラットフォーマーが強い影響力を持ち、AIなどの技術によって運用の自動化や省人化が検討される時代にあっても、事情の異なる人々がネットワークを通じて協調する営みは、本質的には変わらないと考えています。立場や利害の異なる人々が同じコミュニティに集い、対話を重ね、ときには折り合いをつけながら、合意と信頼を少しずつ積み重ねていく。そんな人間同士の「自律・分散・協調」にこそ、インターネットの真髄があるのではないかと思います。

このコラムが配信される2026年7月15日からは、愛媛県松山市にてJANOG58が開催されます。現場のエンジニアが日々の運用知見や課題を共有し合うこの場には、私が大切にしたい日本のインターネットのコミュニティ文化が息づいているように感じています。私自身も、インターネットを利用し、そしてサービスを提供する当事者の一人として、この文化を大切にしながら、日々の活動に向き合っていきたいと思っています。

■筆者略歴

鈴木 恒平 (すずき こうへい)

1993年6月生まれ。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。2019年4月にジュニパーネットワークス株式会社へ入社し、大手通信事業者や公共・学術機関向けの技術提案および導入支援を担当。2025年1月にLINEヤフー株式会社へ入社。現在は同社のバックボーンネットワークの設計・運用に従事。

(編集者注: JANOG58はすでに終了しています。)

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