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ARIN 42でのIPアドレス・AS番号分配ポリシーに関する提案ご紹介

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2018年10月4日(木)、5日(金)に、カナダ・ブリティッシュコロンビア州バンクーバーにおいて、ARIN 42ミーティングが開催されます。ARIN (American Registry for Internet Numbers)は、北米とカリブ海周辺の一部地域を受け持つ地域インターネットレジストリ(RIR; Regional Internet Registry)の一つです。秋のARINミーティングは通常、NANOG (The North American Network Operators Group)ミーティングとの併催されることになっていますが、今回もこれまでに倣ってNANOG 74ミーティングと併せて開催されます。

ARIN 42 Webサイト

APNIC (Asia Pacific Network Information Centre)地域と同様にARIN地域においても、IPアドレス・AS番号の分配ポリシーに関する議論は、メーリングリストのほか、オフラインミーティングの場でも行われます。

ARINにおけるポリシー策定プロセスの詳細については、ARIN 37に関するJPNIC Blog記事でご紹介していますので、そちらをご覧ください。

今回のARIN 42では、合計5点のポリシー提案が議論される予定です。注目の提案は「Recommended Draft Policy ARIN-2017-12: Require New POC Validation Upon Reassignment(再割り当てにおける新たな連絡先情報の認証の必要性)」です。この提案は、WHOISの正確性向上に関するものです。Recommended Draft Policyの状態にありますので、ポリシー文書への実装目前の状態にあり、提案内容も洗練された状態にあると言えます。ARIN地域での議論の内容は、他RIR地域での議論にも影響を及ぼすことが多く、JPNICでも関心を寄せています。

以下では、それぞれの提案について簡単にご紹介します。提案についてご興味を持たれた方は、提案名に張られたリンクから詳細を確認してみてはいかがでしょうか。

■Recommended Draft Policy ARIN-2017-12: Require New POC Validation Upon Reassignment(再割り当てにおける新たな連絡先情報の認証の必要性)

ARINポリシーの現状: IPアドレスの再割り当てを行う際、IPアドレスの割り当て先組織、割り当て先組織の連絡先となる担当者に関する情報(連絡先情報)が登録されます。連絡先情報中に登録された電子メールアドレスには、到達可能かどうかを確認するための電子メールが、年に1回ARINより送信されます。

問題点: 一部の大規模なISPは、再割り当てされたIPアドレスに関する連絡先となる情報を、情報主体本人に確認せず登録しています。担当者1人に対して複数の連絡先情報が登録され、ARINからの連絡先確認を目的としたメールを毎年多数受信するケースが見受けられます。また、機械的に登録を行っているケースもあり、WHOISに登録されることの意味を理解していない担当者の連絡先情報を、多数生成することに繋がっています。

提案の概要: ISPにより連絡先情報が新たに登録される際に、情報を登録しようとしたISP、連絡先情報が登録されるIPアドレスおよび割り当て先組織名を、連絡先情報中に登録された電子メールアドレス宛に送信します。電子メールを受け取った担当者が電子メールの内容を確認することではじめて、連絡先情報がARINデータベースに登録されます。

■Recommended Draft Policy ARIN-2018-1: Allow Inter-regional ASN Transfers(レジストリ間AS番号移転の許可)

ARINポリシーの現状: ARIN地域では現在、他のRIRと契約する組織へのAS番号移転は認めておらず、ARIN契約組織間での移転のみ認められています。

問題点: 以前は、レジストリをまたぐ移転の際に、RPKI(リソースPKI)に関する懸案があったが、もはや問題ではないと考えられています。

提案の概要: AS番号の移転を受ける際に、AS番号割り当て要件を満たすことを確認するRIRを対象として、AS番号移転を許可する。具体的にはアジア太平洋地域を管轄するAPNIC、ヨーロッパおよび中東地域を管轄するRIPE NCCが該当します。

■Recommended Draft Policy ARIN-2018-3: Remove Reallocation Requirements for Residential Market Assignments(個人ユーザーへの割り当てを目的とした再割り振り要件の廃止)

ARINポリシーの現状: 一定の条件を満たす場合にARINメンバーは、個人ユーザーへの割り当て用に再割り振りを行う必要があります。

問題点: メンバーはこの再割り振りのための情報を管理する必要があり、その管理が複雑になってきています。その一方で、登録された情報の重要性が低下してきています。

提案の概要: 現在のポリシーから、個人ユーザーへの割り当てを目的とした再割り振りに関する記述を削除する。

■Recommended Draft Policy ARIN-2018-4: Clarification on Temporary Sub-Assignments(再割り当ての明確化)

ARINポリシーの現状: ポリシー文書が策定された際には、ホットスポットへのIPアドレス割り当てや、ネットワークに一時的に持ち込まれるデバイス等へのIPアドレス割り当てについて、特段の考慮はされていない状態である。

問題点: ホットスポットでのIPアドレス割り当て、ネットワークに一時的に持ち込まれるデバイス等へのIPアドレス割り当てが、(再)割り当ての定義である「分配を受けた組織での独占的使用」には該当しないことを明確化する必要がある。また、IETFにおいては、RFC8273(Unique IPv6 Prefix per Host)が2017年12月に発行され、このRFC8273に準拠したIPv6アドレスの割り当てについても、ポリシー文書には考慮して記載する必要がある。

提案の概要: ホットスポットでのIPアドレス割り当て、ネットワークに一時的に持ち込まれるデバイス等へのIPアドレス割り当てといった、第三者によるアドレスの一時的な利用は、ポリシー文書の2.5項に記載された(再)割り当ての定義には該当しないことを記載します。

■Draft Policy ARIN-2018-2: Clarification to ISP Initial Allocation and Permit Renumbering(ISPの初期割り振りとリナンバリング許可の明確化)

ARINポリシーの現状: ARINより直接IPv4アドレスの割り振り/割り当てを受けていない場合、申請のみで/24の初期割り振りを受けることが可能となっています。/24を超え、/21までの初期割り振りを希望する場合、最大24ヶ月間の割り当て計画を提示し、アドレスの必要性を証明する必要があります。

問題点: 現在有効なポリシーの記述では、最大24ヶ月間の割り当て計画を提示することなく、/24を超える初期割り振りを受けることが可能なように読める。

提案の概要: ARINより直接IPv4アドレスの割り振り/割り当てを受けていない場合には、申請のみで/24の初期割り振りを受けることが可能となっていること、/24を超え、/21までの初期割り振りを希望する場合、最大24ヶ月間の割り当て計画を提示し、アドレスの必要性を証明する必要があることを明確に記載する。また、上流プロバイダから再割り振りまたは再割り当てを受けている場合には、ポリシー文書の4.2.3項および4.2.4項にしたがって効率的に利用していることを示す必要がある旨を記載します。

メーリングリストに流れたこれまでの議論の内容や当日の議論、ARIN ACによる検討の結果は、メーリングリストのアーカイブから参照することが可能です。また、ミーティング期間中は中継が行われる予定ですので、ご興味を持たれた方はリモートで参加してみてください。また、今回はARINでの提案をご紹介しましたが、JPNIC、APNICのポリシーフォーラムで議論をしてみたいと思う提案がありましたら、ぜひお聞かせください。



(ARINのFacebookページより)

写真は、2018年4月にフロリダ州マイアミで開催されたARIN 40ミーティングの様子です。今回はJPNICからも職員が参加しますので、メールマガジンなどでのあらためての報告を予定しています。どうぞお楽しみに。

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