JPNIC Blog JPNIC

第4回烏鎮サミットレポート

dom_gov_team 

インターネット推進部の前村です。2017年12月3日(日)から5日(火)までの3日間、中国浙江省の烏鎮で、今年で4回目となった世界インターネット大会・烏鎮サミット(以下、烏鎮サミット)が開催されました。私は2016年に引き続き、ICANN理事の立場で参加することになりました。ICANNからは他に、グローバルステークホルダーエンゲージメントを統括するSally Costertonと、北京エンゲージメントセンターのJian-Chuan Zhangが、私と共に烏鎮入りしました。Sallyが、ICANNからの烏鎮サミット参加を、ICANNブログでお知らせしています。

ICANN in Wuzhen, China – Fourth World Internet Conference and More

この烏鎮サミットについては、2016年の第3回の模様もJPNICブログで報告しています。

第3回烏鎮サミットレポート

景観地区や会場であるWuzhen International Internet Exhibition and Convention Center (WIIECC)の様子、烏鎮サミットの位置付けなどは、この前回のブログに譲りたいと思います。

ホテルと会場との行き来は、10分ほど歩きます。10分と言うと、徒歩での移動としては少し長い感じがしますが、古い水郷の情緒を残す景観地区は、日本の田舎の風景にも似て、どことなく懐かしく、心地よい徒歩移動でした。1日のセッションが終わってホテルに戻る頃には日は落ちていますが、宿やお店に灯がともった水郷も、幻想的できれいです。

夜の烏鎮景観地区

前回は、日本からの参加者にお会いすることがなかったのですが、今年は慶應義塾大学の村井純さんが、Sallyが参加したセッションに登壇なさっていましたし、他にも何人かの方を会場でお見かけしました。主催者発表では、世界80ヶ国から1,500人を超える参加ということで、全体の参加者数は前回より少し少なかったようです。

今年のテーマは、”Developing Digital Economy for Openness and Shared Benefits – Building a Community of Common Future in Cyberspace (開放性と利益共有のためのデジタル経済の発展 – サイバー空間に未来を共有するコミュニティを築く)”とされ、中国のインターネット政策にあって開放性という言葉が印象的です。また、テーマに掲げられた通り、プログラム全体がデジタル経済に焦点があたり、政策プロパガンダ色が薄まった感もあります。

初日の全体セッションには、開幕式にApple社社長のTim Cook氏と、Cisco Systems社社長のChuck Robbins氏、パネルディスカッションにGoogle社社長のSundar Pichai氏と、グローバルなインターネットやICTを代表するリーダー達が参加しました。どの方々の発言にも、いまやICTに関するサービスやプロダクトで世界をリードする中国に対する期待が巧みに表現されていて、興味深かったです。

P1450526_sml.pngパネルディスカッション「デジタル経済:グローバルな革新と発展への新たな動き」の様子。 左からパネルモデレータの田薇氏(中国中央電視台)、Nicholas Rosellini氏(国連開発計画)、John Hoffman氏(GSMA)、Joshua Cooper Ramo氏(Kissinger Associates)、Sundar Pichai氏(グーグル)、LEI Jun氏(シャオミー)

私は、”Norms in Cyberspace: Development and Prospect (サイバー空間における規範:状況と今後)”という招待セッションに登壇しました。私の役目は、ICANNおよび技術コミュニティのインターネットに対する役割やマルチステークホルダーアプローチ、識別子の重要性を説明することでしたが、セッション全体としては、高度化とともに複雑化するインターネットにおける、サイバーセキュリティに対するグローバルな取り組み、AIにおける規範といったところに焦点が集まりました。

P1450526_sml.pngセッション中の様子。左から黄志雄氏(武漢大学)、Bruce McConnell氏(East West Institutes)、Neil Walsh氏(国連サイバー犯罪グローバルプログラム)、前村、Noyoung Park氏(高麗大学)、Luigi Gambardella氏(ChinaEU)、Christian Daviot氏(ANSSI)

烏鎮サミットでは毎回何らかの文書が公表されますが、今回は「烏鎮アウトルック」と称される文書が、会期中に組織委員会名で公表されました。今後のインターネットやデジタル経済に関する展望が示されたもので、冒頭で申し上げたように、政策プロパガンダ色よりも、デジタル経済の発展に向けた国際的な協力を求める内容が強く押し出されています。

このように、私としては好感できる点が多かった今回の烏鎮サミットでしたが、政府高官から発せられる、サイバー主権の尊重といった政策事項の表現が改まっているわけではありません。警戒感をあらわにする報道が多いことも確かです。

「インターネットガバナンスの改善が必要だ」という発言も耳にしました。これだけ聞くと警戒してしまうわけですが、サイバーセキュリティに関するグローバルな協力体制の必要性、などの文脈を示すとすると、中国語から英語に通訳される過程で失われているニュアンスなど、真意を確認する余地はあるように思います。

今回はセッション参加を最低限に、中国の関係機関とのバイラテラル会談をいくつか行いましたが、どこの団体もグローバルなインターネットに対する関心と知識が豊富で、圧倒されます。ICTのサービスやプロダクトだけでなく、今後ICANNやAPNICなどの場でも、影響力を増していくことは容易に想像されます。そういう中国に大いなる期待を寄せ、政府や人々の考え方を理解し、こちらの考え方を示し、理解してもらうこと。烏鎮サミットに参加する世界中のインターネット関係者の目的はここにあり、発言の端々からそれを感じることができました。

この記事を評価してください

この記事は役に立ちましたか?
記事の改善点等がございましたら自由にご記入ください。

このフォームをご利用した場合、ご連絡先の記入がないと、 回答を差し上げられません。 回答が必要な場合は、 お問い合わせ先 をご利用ください。