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.COMのレジストリ契約更新

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2020年3月27日、ICANNの事務総長 Goran Marbyは、”ICANN Decides on .COM Amendment and Proposed Binding Letter of Intent between ICANN and Verisign”(ICANNは、ICANNとベリサインとの間の.COM契約更新と意向表明文書に関して決定を下した)と題したBlog記事を公開して、ベリサインとの.COM契約の更新を完了したことを伝えました。
 
ICANN Decides on .COM Amendment and Proposed Binding Letter of Intent between ICANN and Verisign

https://www.icann.org/news/blog/icann-decides-on-com-amendment-and-proposed-binding-letter-of-intent-between-icann-and-verisign

本稿では、このBlog記事と、記事から参照されているものを中心とした関連文書から、.COM契約更改に関する内容、論点、そしてこの決定に至る手続きなどを解説していきたいと思います。

 

●背景など

.COMは、2020年1月8日のblog記事でも紹介した .ORGなどと並んで、インターネットの黎明期から存在し、90年代から00年代にかけての空前のインターネットブームの異名にも使われた、gTLDの雄です。全世界の登録ドメイン名数の半数近くを占め、最新データでは1億4800万件ほどの登録があります。  
 
そんな.COMに関する契約更新ということもあり、大きな注目が集まったということです。gTLDに関する契約更新は、基本的にICANN事務局の権限で判断がなされます。レジストリ事業者との交渉を進めた上で更新契約案を取りまとめますが、この契約案はパブリックコメントに掛けられました。パブリックコメントは2020年1月3日に開始され、2月14日に終了しました。
 
 Proposed Amendment 3 to the .COM Registry Agreement
https://www.icann.org/public-comments/com-amendment-3-2020-01-03-en
 

3月26日に事務局レポートが公開されましたが、それと同時に契約更新の手続きを進めた結果、3月27日の更新完了となったということだと考えられます。 .COM契約の更新は特に関心が高いものですが、ICANN事務局においては、業務遂行上の幅広い事項に関してパブリックコメントを実施することが定められており、以下のページでそのガイドラインを参照することができます。

Public Comment Guidelines for the ICANN Organization
https://www.icann.org/news/blog/public-comment-guidelines-for-the-icann-organization

また、JPNIC WebサイトのICANNアナウンスメント一覧ページでは、パブリックコメント開始とともにその案件名を案内し、ICANNのアナウンスメント原文へのリンクを掲載しています。

 
冒頭に挙げた事務総長Goran MarbyによるBlog記事自体にも決定のあらましが示されていますが、それから参照されている、この契約更新に関するDecision Paperというものに、具体的な契約更新に関する内容や論点が示されています。以下、このDecision Paperから、内容や論点に関する主なポイントをいくつか挙げていきます。

●米国商務省とベリサインの間の協力覚書

米国商務省とベリサインとの間には協力覚書(Cooporative Agreement)というものが結ばれています。 協力覚書はICANN設立以前に確立されており、当時Network Solutions Inc.としてInterNICのサービスを受託するための覚書でしたが、ICANN設立以後現在に至るまで覚書の枠組みは維持されました。ICANNの設立にあたっては、ベリサインによるルートゾーン保守と米国商務省のルートゾーン承認権を規定する役目を果たし、2016年10月のIANA監督権限移管以降も、インターネットにおける最大利用者を誇る.COMに関する監督権限を規定するものとして維持されています。
 
現在有効な協力覚書、第35修正版(Amendment 35)は、2018年10月に成立。今回の.COM契約更新は、この第35修正版の反映が、目的の一つのようです。以下、契約更新のポイントを示していきます。

●価格制限の緩和

協力覚書第35修正版における最大の変更点は、価格制限の緩和です。第35修正版では、「ccTLDや新gTLD、ソーシャルメディアの利用がよりダイナミックなDNS市場を創造している」ことを理由に、これまで7.85米国ドルまでと定められていた登録ドメイン名あたりの年間登録料に対して、年率7%を上限として値上げが許容されました。ICANNではこの価格制限緩和を更新契約案に盛り込みましたが、パブリックコメントの総数9,000あまりのうち、95%がこの価格制限緩和に懸念を示すものでした。 これに対してDecision Paperでは以下の理由を掲げ、この懸念に返答しています。
  • レジストリにおける価格上限があった今まででもレジストラが登録者に課す登録料は値上がりしている
  • キャンペーンを通じて大量のコメントを喚起したのが、ドメイン名の転売で利益を得る二次市場事業者であり、実際には登録料を遥かに超える料金を課している
  • 更新契約案では価格制限緩和後も価格改定に対して公示から施行までに半年の猶予を定め、その間に契約更新を行うことで登録者は最大10年間、現在の価格を据え置くことができる
  • ICANNは競争当局や価格規制当局ではない

DNSセキュリティに対するコミットメント

新gTLDの基本契約には含まれている、レジストラに対してDNSセキュリティ脅威を悪用するようなドメイン名の登録を禁止する条項が付け加わりました。この点に関するパブリックコメントの反応は概ね好意的だったようです。

インターネット識別子の安定性向上のための追加拠出

今回の契約更新には、2021年1月から向こう5年間にわたって総計2,000万米国ドルをベリサインが拠出する旨の別口の意向表明(Letter of Intent)が組み込まれており、この拠出金はインターネットの識別子に関する安定性向上に関するICANNのミッションを支援することが目的となっています。パブリックコメントの反応には好意的なものもある一方、この拠出金の使途が不明としてベリサインの拠出の動機を懐疑的に捉えるものもあったようで、ICANNでは今後使途に関する説明責任と透明性を最大限確保するとしています。
 

新gTLD基本レジストリ契約の技術報告義務への整合性確保

データエスクロー、登録データサービス、ゾーンファイルアクセス、レジストリレポートの4点の技術報告義務に関して、新gTLD基本レジストリ規約への整合が図られました。

登録データアクセスプロトコル(RDAP)対応

次世代WHOISプロトコルとして、新gTLD基本契約ではGDPR対応暫定仕様に盛り込まれた、登録データアクセスプロトコル(Registration Data Access Protocol, RDAP)に関して、現在レジストリステークホルダーグループと調整中のレベルまで、ベリサインが対応を進めることが合意されました。

おわりに

3月末に発表された、ICANNとベリサインとの間の.COM契約更新に関して説明しました。本件に関する経緯や背景は複雑で、数多くのドキュメントにわたっていますが、今回発表とともに参考資料として公表された Decision Paperは、契約更新のポイントとともに、判断の要旨や参照文献が提示してありますので、ご関心のある方はご一読をお勧めします。