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IGF京都2023フォトレポート

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2023年10月8日(日)から12日(木)までの5日間、京都市の京都国際会館でインターネットガバナンスフォーラム(IGF)京都2023(以下、IGF2023と略します)が開催されました。IGFは国際連合が主催、ローカルホストは各国政府が務めることになっており、今回のローカルホストは総務省でした。355セッションにわたりさまざまな議論が展開され、今後いろいろなメディアや団体からいろいろな形でその内容が紹介されると思いますが、ここではIGF2023の全体像を中心にレポートします。IGFでは、通例として閉会前後でサマリーレポートのドラフトが公開され、統計数値などが明らかになっていますので、そちらもご参照ください。

6,300人をおもてなしした史上最大のIGF

会場となった京都国際会館は、1966年に設立された日本初の国際会議場で、かつてInternet Week 99、APRICOT2005、そして先月2023年9月にAPNIC56カンファレンスが開催された会場です。立派な庭園を擁した格式のある会場に迎えた現地参加者は、サマリーレポートによると6,279人とされ、アディスアベバで開催されたIGF2022の現地参加2,500人を遥か上回る、史上最大のIGFとなりました。

 

 

国際会館は大きな会議ホールを複数持ち、多数の会議室がありますが、会議室以外のスペースも潤沢にあったため、初日Day0の晩に開催されたガーライベントは会議棟の中のホワイエで開催されました。写真は鈴木総務大臣のご挨拶の様子ですが、中二階などにもホワイエが配されているため、思い思いの場所で歓談するグループがいて、スピーチの時にはステージをのぞき込む、のような様子が伺えると思います。ビュッフェにはさまざまな料理が並んでいましたし、ガーライベントの最後には日本庭園の向こうに花火が上がりました。

 

 

IGFでは参加者に昼食が提供されますが、Day0、Day1の昼食はお弁当による提供、豪華なお弁当でした。その他ガーライベントや昼食のビュッフェには、多様な要請に応えつつ、京都らしいおばんさいなど、日本の特色の出たものも多かったですし、ステージや会場のそこここには日本らしい造作がなされました。その他随所に感じられたローカルホストのおもてなしに関しては、総務省のIGF京都2023ウェブサイト「おもてなし」ページでご覧になることができます。

 

 

岸田首相のご挨拶、日本発セッション

 

Day1の開会式では、歌舞伎「連獅子」を元としたプロジェクションマッピングによる未来的な映像作品による迫力のあるオープニングの後、岸田首相が挨拶なさいました。マルチステークホルダーアプローチによる対話の場としてのIGFの意義と重要性を強調し、IGF2023での議論の進展に期待する力強い挨拶でした。首相は開会式に引き続いて持たれたAIをテーマとしたものハイレベルセッションにも登壇なさり、2023年5月に開催されたG7広島サミットの成果である広島AIプロセスに触れ、日本政府の積極的な取り組みを示しました。

 

 

開会式により正式にIGF2023が始まったわけですが、Day0イベントを含めて全部で355セッションが、12に上る会議室で同時進行するため、すべてのご紹介をすることはできませんし、今後いろいろな団体やイベントで内容の紹介はされると思いますが、ここでは日本発のセッションを二つ紹介したいと思います。日本IGFタスクフォースがISOC-JPとの共催でセッション提案チュートリアルを開催するなど、日本からの提案が推進されたことによって、日本人がオーガナイザーや登壇者に入っているセッションは20以上と、過去最高を記録しました。

 

一つ目のセッションは、IGF 2023 Day 0 Event #134 Talk with Metaverse residents – a new identity and diversity(メタバース住民と話す – 新たなアイデンティティと多様性)です。これは日本インターネットガバナンスフォーラム2022でのバーチャル美少女ねむさんとのトークイベント「メタバース時代のインターネットガバナンス」を元に、IGF向けに作り変えて提案したところ、採択されたものです。日本IGF2022のセッションではねむさんから、体にギアを付けて動きを感知することでアバターの動きに反映されるといった道具立てや、今のメタバースの状況などの説明があって、それに対して議論するスタイルでしたが、IGF2023ではねむさんと共同研究を行う人類学者Liubmila Bredikhinaさんがセッションに参加し、ジェンダー論の観点からの議論もありました。メタバース上の人格をIGFに登壇させる、メタバースの世界をIGFコミュニティに見てもらう、そしてねむさんのファンのようなセグメントの方々にIGFに参加してもらうなど、いくつも意義深いことが実現したセッションとなりました。

もう一つは、Day2に開催された、IGF 2023 WS #69 Manga Culture & Internet Governance-The Fight Against Piracy (漫画文化とインターネットガバナンス – 海賊版と戦う)です。漫画海賊版は日本の出版業界に大打撃を与え大きな問題となっていて、出版業界は関係者と連携してさまざまな対応を行っています。このセッションには慶應大学教授の村井純さんとともに、「ポーの一族」などの作品で知られる大漫画家、萩尾望都(はぎおもと)さんも登壇しました。前半で、漫画文化の豊穣さや重要性が議論された後、海賊版による被害の実態や対応策が議論されました。質疑応答の時間には数名の参加者がフロアマイクに並び、正規版よりも海賊版のほうがアクセスが良い実状が訴えられたり、逆に海賊版規制による表現の自由への影響への懸念が呈されるなど幅広い議論がありましたが、全体的には漫画に対して並々ならぬ愛着を持った温かい意見が多く聞かれました。セッション企画者である出版業界の方々とも話をしましたが、IGFの場で海外の方々にもこの問題を知らしめるとともに意見が聞けた機会をとても高く評価なさっていました。このような機会が積み重なって国際的な認知が高まり、問題解決に少しでも近づくことを願ってやみません。

会場には会議棟以外に展示棟があり、こちらはIGF Villageと呼んで関係団体や企業のブースが立ち並び、参加者はかならずIGF Villageを通って会議棟に行くことになりますが、こちらに入って真っ先にみえるところに、漫画海賊版対策にあたる出版社5社の連合、JPMACがブースを出していました。海賊版対策を呼び掛けることが目的ですが、IGF参加者を世界中で人気のある漫画のキャラクターたちが出迎える結果となり、IGFの日本開催に花を添えるものとなりました。

IGFに向けて「絆」

 

最後に閉会式のご紹介をします。閉会式は清水寺の貫主、森清範さんの席上揮毫で始まりました。森さんは漢字能力検定協会が毎年定める「今年の漢字」を揮毫なさる方です。漢字は、2011年の今年の漢字である「絆」でした。2011年には東日本大震災があり、困難な時期を思いやりと連帯で乗り越える上で、絆という一文字は、まさに2011年を代表する漢字だと大いに納得しました。IGFに集うあらゆるステークホルダーが知恵を寄せ合い、ステークホルダーそれぞれの力で一緒に問題を解決していくのがインターネットだとすると、今直面しているさまざまな問題を乗り越えるには、東日本大震災の時のように絆が必要ではないか、そういった示唆であるように感じました。

閉会の挨拶では、渡辺孝一総務副大臣に続いて、京都市長の門川大作さんからもご挨拶がありました。和装で現れた門川さんは、京都が古都であるとともに数々の革新的な事業を生み出した地であることに触れ、IGF京都開催の意義を強調しました。

本項冒頭で、ローカルホスト総務省のおもてなしについて触れましたが、閉会式の森さん、門川さんのお話しも、このおもてなしを現わす極めて重要な要素だと思います。

今回6,300人を京都に迎えて、その中には普段から仕事のやり取りがある同僚も多く含まれていましたが、IGF京都2023の素晴らしさ、京都の素晴らしさに感嘆の言葉をたくさんもらいました。IGFコミュニティを大いにおもてなしし、印象深く、意義深いIGFになったのではないかと思うところです。

 

 

 

 

 

 

 

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