RIPE 93でのIPアドレス・AS番号分配ポリシーに関する提案ご紹介
ip_team IPアドレス 他組織のイベント2026年10月26日(月)~30日(金)の日程で、RIPE 93ミーティング(RIPE 93)が開催されます。RIPE NCC (Réseaux IP Européens Network Coordination Centre)は、世界に五つある地域インターネットレジストリ(RIR; Regional Internet Registry)のうち、ヨーロッパ、中東および中央アジア地域を担当するRIRです。
今回のRIPE 93はブルガリア・ソフィアで開催され、現地参加のほかオンラインでの参加も可能となっています。
APNIC (Asia Pacific Network Information Centre)地域と同様に、RIPE NCC地域においても、IPアドレス・AS番号の分配ポリシーに関する議論は、メーリングリスト(ML)のほか、RIPEミーティングの場でも行われます。一方、RIPEのポリシーディスカッションはAPNICとは少し異なる方法で進められます。RIPEにはWorking Group(WG)が作られており、ポリシーディスカッションは提案内容に適するWGで行われます。APNICのPolicy SIGに相当するAddress Policy Working Groupがありますが、ここだけでポリシー議論が行われるわけではないのが特有の仕組みとなっています。またコンセンサスコールは現地会場ではなくメーリングリスト上で行うというのも、APNICと異なる点です。各RIRの特徴は過去の投稿でご紹介しているのでご興味がありましたらご覧ください。
RIPE NCCのポリシー提案の進行状況は、Webサイトで確認できます。現在議論が進められているポリシー提案は3件です。今回は、それぞれの提案内容についてご紹介します。
2026-01: Simplify assignment of first ASN(AS番号初回割り当ての簡易化)
AS番号の割り当てを受けるためには、原則としてマルチホーム接続を行うことや、他のASとは異なる独自の外部経路制御ポリシーを持つことが求められ、その証明を求められます。本提案では、RIPE NCCから直接IPアドレスの分配を受けている組織について、初回のAS番号割り当てに限り、必要性の審査を不要としようというものです。
現在のAS番号の割り当て基準は、AS番号の利用によってインターネット全体の経路制御が複雑化することを防ぐという考え方に基づいています。しかし、4バイトAS番号の普及により、AS番号そのものの在庫には十分な余裕があることから、提案者は初回の割り当てに関しては手続きを簡素化してもよいのではないかと主張しています。
提案者によれば、過去20年間にRIPE NCCが割り当てた4バイトAS番号は25,000個未満であり、同様のペースで世界のRIRが割り当てを続けたとしても、AS番号の在庫が枯渇するまでには3万年以上を要するとしています。
本提案が採択された場合、対象となる組織は初回のAS番号取得時にマルチホーム接続や独自の経路制御ポリシーを証明する必要がなくなります。ただし、割り当てられたAS番号の利用開始後には経路制御ポリシーをRIPE Databaseに登録することが求められます。また、2個目以降のAS番号については、引き続き現行の必要性審査が適用されます。
提案者は、申請者とRIPE NCC双方の事務負担が軽減し、申請から割り当てまでの期間を短縮できること、シングルホーム接続のネットワークでもAS番号を活用した新たなサービスを提供できる可能性があることを利点として挙げています。一方で、AS番号の取得が容易になることで、インターネット全体の経路表に登録されるAS番号が増加し、ネットワーク機器への負担が増える可能性も指摘されています。
本提案は2026年7月に公開され、10月12日には改訂版が公開されています。現在はレビューフェイズに進んでいます。ディスカッションフェイズ(議論段階)では賛同する声が多かったようです。懸念点としてはこの変更が実際に必要なものなのか(マルチホームとしない申請は現状あるのか)、ASが増加することでセキュリティ分野へ生じる影響は考慮されているのかといった点が挙げられました。APNICではこのような議論はまだ挙がっていませんがどのようになるか注目です。
2026-02: Contractual Accountability Framework for Infrastructure-Level Network Abuse(インフラストラクチャレベルのネットワーク不正利用に対する責任・対応フレームワーク)
RIPE NCCでは、IPアドレスの分配を受ける組織に対し、ネットワークの不正利用に関する連絡先であるabuse-cの登録を求めています。しかし、連絡先が登録されていても、実際に不正利用への対応が行われない場合に、どのような措置を講じるかについては十分な仕組みがないと提案者は指摘しています。
本提案は、DDoS攻撃の指令・制御基盤、マルウェアの配布基盤、フィッシングサイトの運用基盤など、継続的かつ組織的なネットワークの不正利用に対し、IPアドレスの分配を受けている組織が適切な対応を行わない場合の措置を定めようというものです。
具体的には、承認されたブロックリストにおいて、30日間のうち累計14日間にわたり不正利用が確認され、所定の証拠を伴う通知が提出された場合、RIPE NCCが当該組織に改善を求める通知を送付します。通知を受けた組織には7営業日の猶予期間が与えられ、その間に問題のあるネットワークへの対応を行うことが求められます。
期限内に改善が確認できない場合には、RIPE NCCが登録情報に関する一定の管理上の制限を適用するとともに、RIPE Database上に不遵守の状態を表示する仕組みが提案されています。ただし、直ちにIPアドレスを回収するのではなく、影響を受けない他のネットワークへの影響を抑えることも意図されています。
提案者は、単にabuse-cの連絡先を登録するだけでなく、継続的な不正利用への対応についても一定の責任を持たせる必要があると主張しています。一方で、RIPE NCCに新たな管理負担が発生することや、具体的にどのような制限を適用するかについて、別途明確なルールが必要となることも課題として挙げられています。
本提案は2026年10月13日に公開され、現在はディスカッションフェイズにあります。RIPE 93ではSecurity WGにおいて議論が予定されています。
先日のAPNIC62においては、prop-172: Defining Internet Abuse through IP Addresses(IPアドレスを通じたインターネット不正利用の定義)としてまずは不正利用の定義から定めようと提案が行われましたが、どこまでをabuseとするか、不正利用をどのように立証するか様々な意見が出され、継続議論となっています。RIPEではこれに加えて具体的な制限措置案まで出ていますが、どのような議論になるのか、注目してみたいと思います。
2026-03: Clarifying Audit and Policy Compliance Frameworks for IPv6 policies(IPv6ポリシーにおける監査およびポリシー遵守の枠組みの明確化)
現行のIPv6アドレスポリシーでは、アドレスの割り振り・割り当てに関する規定はこれまで更新されてきた一方で、分配後の監査やポリシー違反への対応に関する規定は十分に整理されていませんでした。
本提案では、IPv4アドレスポリシーと同様に、RIPE NCCによるLIRへの監査に関する規定や、料金の未払い、連絡不能、継続的なポリシー違反などを理由とするLIRの閉鎖に関する規定を明記することが提案されています。
提案者は、既存の枠組みを明確化するものであり、ポリシーの本来の意図を変更するものではないとしています。
2026年10月19日に公開され、現在はAddress Policy WGでディスカッションフェイズにあります。
以上3件のポリシー提案ご紹介でした。
RIPEミーティングでは、終了後に発表資料や録画などのアーカイブが公開されます。今回のポリシー提案に関心をお持ちの方は、ぜひ議論の様子もチェックしてみてください。
JPNICブログでは、引き続きRIRのIPアドレスポリシー関連の話題をお知らせしていきます。その他の記事もぜひお読みください。

