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烏鎮サミット:ハイパージャイアント不在も5年目の風格

投稿者 dom_gov_team on 2018年11月19日

JPNICインターネット推進部の前村です。

2018年11月7日から9日まで、今年で五回目を数える、世界インターネット大会・烏鎮サミットが開催されました。私は昨年、一昨年に引き続きICANN理事のミッションとして参加しましたので、その様子を簡単にお伝えします。

私にとっては3回目の烏鎮サミット(World Internet Conference Wuzhen Summit)となりました。烏鎮サミットの位置づけ、現地の風景などは、昨年、一昨年のブログに譲ります。

第3回烏鎮サミットレポート

第4回烏鎮サミットレポート

今年のテーマは、"Creating a Digital World for Mutual Trust and Collective Governance  - Towards a Community with a Shared Future in Cyberspace"(相互信頼と集団的ガバナンスのためのデジタル世界の創造 - サイバー空間で未来を共有するコミュニティに向けて)とされていました。この「相互信頼」「集団的ガバナンス」は政府からのスピーチの随所に盛り込まれていました。他にも印象的な言葉遣いとして(但し、英語の同時通訳を通じてであり、中国語の意味合いは別途確認する必要があります。)、「手に手を取り合って(hand in hand)」「中国の叡智で( with Chinese Wisdom)」などがありました。日本からは、昨年に引き続いて慶応大学の村井純教授が参加、加えて、同じく慶応大学の土屋大洋教授が参加なさっていました。土屋教授は今回初めての参加に関して、以下の記事にまとめていらっしゃいます。

ニュースウィーク日本版:現代の模範村、中国・烏鎮(ウーチン)で開かれた世界インターネット大会

私の登壇は"Norms in Cyberspace: Practices and Explorations"(サイバー空間における規範:実践と探索)というセッション。実は昨年2017年も同じセッションでしたが、セッションタイトル後半が、昨年は Development and Prospect(状況と今後)。今年は一歩前進しているという感じの意味合いで、昨年に引き続きとなる登壇者も多くいました。ICANNにおけるマルチステークホルダーアプローチによるルール作りの実践を、今回はIDNに焦点を当てて説明しました。

今年もグローバルステークホルダーエンゲージメント(GSE)を統括するSally Costertonが私とともに烏鎮入りしており、Sallyは、インターネットによる公共福祉と貧困対策というセッションで、中国国内の関係者以外に、APNICの事務局長Paul Wilson氏、APTLDの事務局長Leonid Todorov氏とともに登壇しました。

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 インターネット関連団体が、インターネットによる情報の提供、能力開発の重要性を唱える中、中国側の登壇者の中には、貧困対策を担当する国務院・扶貧開発領導小組弁公室の官僚の他、地方政府でICT基盤の推進などを担当する担当官もおり、僻地での基盤設置などの状況を紹介。13億人の人口の中に、対策が必要とされる貧困人口がまだ3000万人いると言われ、貧困対策の観点からICT技術やインターネットに大きな期待が寄せられていました。

今回閉幕式の前に1時間ほど空き時間があったため、展示会場を見て回ることができました。会議場の隣には展示会場が3棟ほどあり、写真に示すような大手企業のブースから、スタートアップの小さなブースまでいろいろな展示を見ることができました。

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 この中で非常に印象に残ったのは、遠隔医療のソリューションです。例えば下の写真、平安好医生という会社のソリューションで、右に見えるブースで遠隔地にいる医師の診断を受けた上で、左に見える医薬品の自動販売機で薬が買えるというもの。既にサービス提供中で、遠隔診断を行う医師は1,000人以上いるとのことでした。この会社以外に、医療ソリューションを展示していた会社が確認できただけで5社、他に、遠隔教育も複数。それ以外にも、IoT、AIを使ったさまざまな産業の要素技術の展示にも目を見張るものがたくさんありました。

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中国は既に、電子決済を始めとして世界に誇るICT技術を擁していますが、上に紹介した福祉・貧困対策という観点に一致しますが、広大な国土に大人口を抱え、都市部で不自由のない生活を送る人から田舎で貧困に喘ぐ人まで、13億人という人口を擁する中国では、ICT技術の応用による対策に期待が集まり、スケールの大きさから事業者の成長も見込める、という環境にあります。冒頭、政府の発表で多用されていたとして挙げた「中国の叡智」は、まんざら誇張でもなく、他の国にも適用が可能なICT技術を多数生み出し、更に世界に乗り出そうとする中国の自信が伺えるものと思いました。

主催者が発表した Wuzhen Outlook 2018 によると、参加者は76カ国から1,500人。去年の烏鎮サミットのようにハイパージャイアント揃い踏みとはなりませんでしたが、堅調に集客している様子。今回バンケットホールを複数持つ晩餐棟が新築されるなど、ますます充実していくさまも、自信の表れと言えるでしょう。