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グローバル・デジタル・コンパクト

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今回は、国連で意見募集が行われている「グローバル・デジタル・コンパクト」についてお伝えします。

グローバル・デジタル・コンパクトとは、国連事務総長により2021年9月に提出された報告書「我々の共通の課題(Our Common Agenda)[1]」中に記載された12のコミットメントのうちの一つである、「7. デジタル分野での協力を改善する」配下の以下7項目[2]からなる盟約のことです[3]

  1. すべての学校を含むすべての人々をインターネットに接続する
  2. インターネットの分断を回避する
  3. データを保護する
  4. 人権をオンライン上に適用する
  5. 差別および誤解を招くコンテンツに関する説明責任基準を導入する
  6. 人工知能に関する規制を推進する
  7. グローバル公共財としてのデジタルコモンズ(共有地)

「我々の共通の課題」は戦争や気候変動などのリスクから次の世代を救うための行動計画で、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」「持続可能な開発目標(SDGs)」[4]を含む既存の合意の実施を加速させるために設計されました。

2020年9月21日に国連総会で決議された決議文書A/RES/75/1(国連創立75周年記念宣言)[5]から該当部分を翻訳したものから引用します。

  1. デジタル協力の充実:デジタル技術は社会を大きく変貌させました。デジタル技術は前例のない機会を提供すると同時に、新たな課題も提供しています。不適切に、あるいは悪意を持って使用された場合、国内および国家間の分裂を助長し、不安を増大させ、人権を損ない、不平等を悪化させる可能性があります。私たちの世界は今、接続性と社会経済的繁栄のためにこれまで以上にデジタルツールに依存しているため、有益な技術利用の可能性を最大限に示すデジタル協力とデジタルの未来に関する共有ビジョンを形成し、デジタル信頼とセキュリティに取り組むことは、引き続き優先事項でなければなりません。デジタル技術は、2030アジェンダの実現を加速させる可能性を秘めています。私たちは、すべての人に安全で手頃な価格のデジタル・アクセスを確保しなければなりません。国連は、すべてのステークホルダーがこうした審議に参加するためのプラットフォームを提供することができます。

これを受け、「我々の共通の課題」では、第4章「デジタルコモンズを取り戻す」で、IGFに対しデジタルコモンズ(共有地)の効果的なガバナンスを支援し、現実世界の発展に歩調を合わせるため適応・革新、改革を促したい、としています。さらに、「デジタル協力のためのロードマップ」[6]の勧告を踏まえ、国連、各国政府、民間部門、市民社会は「未来サミット」(「今後」の項参照)に向けてマルチステークホルダーによるデジタル技術トラックとして結集し、グローバル・デジタル・コンパクトに合意することができるように機会が用意されているようです。グローバル・デジタル・コンパクトにより、すべての人にとってオープン、自由かつ安全なデジタルの未来のための原則の輪郭が描かれる、とうたっています。

デジタル協力

グローバル・デジタル・コンパクトおよび「我々の共通の課題」の中で出てくるデジタル協力(digital cooperation)は、2018年に国連事務総長によって召集された国連デジタル協力に関するハイレベルパネル(HLPDC)、およびその結果を受けて2019年に公開された報告書[7]で多用された用語で、社会への恩恵を最大化し危害を最小化するために、デジタル技術の社会的、倫理的、法的、および経済的な影響について取り組むために協同作業を行う方法を意味するとされています[8]。本件については、以下のブログ記事をご参照ください。

意見募集

国連は、個人、グループ、協会、組織、団体など、あらゆるところから、グローバル・デジタル・コンパクトに何を求めるかについての意見を聞きたいと考えているとのことで、相談会を主催したり、意見の提出を求めています[9]

相談会の準備や意見書作成にあたっては、デジタル技術の未来と継続的なデジタル変革について考えてみてください、と書かれています。その糸口となる質問として挙げられているのは、次のものです[10]

  • 「すべての人にとって開放され、束縛されない、セキュアなデジタルの未来」を確実にするためには、どうすればよいか
  • グローバル・デジタル・コンパクトに盛り込むべき共通の原則は何か
  • どのような問題に取り組むべきか:「我々の共通の課題」に記載されたものか、あるいはその他の問題か
  • 国際社会はそれらに対処するために何ができ、何をすべきか

国連事務総長の技術特使事務所[11]が開設したオンラインプラットフォーム[12]では、他者に相談したり、集合的な見方を共有したり、自身の意見を提出したり[13]、すでに提出された意見を閲覧[14]したりすることができるようになっています。組織としてだけでなく、個人で提出することも可能です。詳細については、ハウツーガイド[15]に記載されています。提出期限は2023年3月31日です。

ハウツーガイドには、簡潔かつ具体的なインプットが必要であるとの認識により、各分野において、以下の2点を中心に提案してほしい、と書かれています。

  1. すべての政府、企業、市民社会組織、その他のステークホルダーが遵守すべき基本原則
  2. これらの具体的な原則を実現するための主要なコミットメント。これらは、以下のいずれか、もしくは両方に基づくという形をとることが可能。
    • 提出者が「すべき」と考えていること
    • 提出者/提出者の組織がすでに約束していること

今後

グローバル・デジタル・コンパクトは、今後、人権・労働・環境・腐敗防止の4分野の10原則からなり、1999年の世界経済フォーラムで当時の国連事務総長コフィ・アナン氏が企業および団体に対して提唱し、2000年に発足したイニシアティブである、「国連グローバル・コンパクト」[16]のような活動となるのではないかと想像されます。つまり、民間企業・団体による賛同または活動への参加が求められることになるのではないか、ということです。

グローバル・デジタル・コンパクトについては、2023年3月31日まで意見募集されたのち、正式な政府間協議に備えるため、事務局がまとめた上で2022/2023年の第77回国連総会で加盟国および一般公衆に提示されます。2024年9月22日および23日に米国ニューヨーク市で開催予定の未来サミット(Summit of the Future)[17]で採択される予定です。その後、グローバル・デジタル・コンパクトへの企業・団体の参加を普及・推進する活動が行われると想定されます。


[1] https://www.unic.or.jp/news_press/info/42716/

[2] https://www.unic.or.jp/files/Our_Common_Agenda_KEY-PROPOSALS-ACROSS-THE-12-COMMITMENTS_J_FINAL.pdf

[3] https://www.un.org/techenvoy/global-digital-compact

[4] https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/2030agenda/

[5] https://daccess-ods.un.org/access.nsf/Get?OpenAgent&DS=A/RES/75/1&Lang=E

[6] 国連事務総長報告書、デジタル協力のためのロードマップ(2020年6月)https://www.un.org/en/content/digital-cooperation-roadmap/assets/pdf/JPN_DIGITAL_ROADMAP.pdf

[7] The age of digital interdependence, Report of the UN Secretary-General’s High-level Panel on Digital Cooperation, http://www.un.org/en/pdfs/DigitalCooperation-report-for%20web.pdf

[8] The age of digital interdependence, p.6

[9] Global Digital Compact: Background Note, p.2 https://www.un.org/techenvoy/sites/www.un.org.techenvoy/files/Global-Digital-Compact_background-note.pdf

[10] 同上

[11] https://www.un.org/techenvoy/

[12] https://www.un.org/techenvoy/global-digital-compact

[13] Submission of Inputs for the Global Digital Compact

 https://input.un.org/EFM/se/3995D1A472EC4637

[14] Submitted inputs to the Global Digital Compact https://www.un.org/techenvoy/global-digital-compact/submissions

[15] https://www.un.org/techenvoy/sites/www.un.org.techenvoy/files/Global-Digital-Compact_how-to-engage-guide.pdf

[16] https://www.ungcjn.org/gcnj/about.html

[17] United Nations A/RES/76/307, Modalities for the Summit of the Future, Resolution adopted by the General Assembly on 8 September 2022, https://documents-dds-ny.un.org/doc/UNDOC/GEN/N22/587/47/pdf/N2258747.pdf?OpenElement

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