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2020年のIPアドレス・AS番号分配ポリシーを振り返る

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世界に五つある地域インターネットレジストリ(RIR; Regional Internet Registry)ではそれぞれ、オフラインミーティングが年に2回開催されています。アジア太平洋地域を担当するAPNIC (Asia-Pacific Network Information Centre)、北米とカリブ海周辺の一部地域を担当するARIN (American Registry for Internet Numbers)、ヨーロッパおよび中東地域を担当するRIPE NCC (Reseaux IP Europeens Network Coordination Centre)でのポリシー提案は、本ブログでも定期的に取り上げています。

APNIC (Asia-Pacific Network Information Centre)

ARIN (American Registry for Internet Numbers)

RIPE NCC (Reseaux IP Europeens Network Coordination Centre)

アフリカを担当するAFRINIC (The African Network Information Centre)、南米を担当するLACNIC (Latin American and Caribbean Internet Address Registry)においても、APNIC、ARINやRIPE NCCと同様に、メーリングリストやミーティングにおいて、IPアドレス・AS番号分配ポリシーに関する提案に関する議論が活発に行われています。

どのミーティングもこれまでは、オンサイトでの開催+リモート参加のスタイルで開催されていました。しかし、2020年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、2月にオーストラリア・メルボルンで開催されたAPNIC49ミーティングのみがこれまでと同様のスタイルで開催され、APNIC49を除くRIRのミーティングの全てでオンサイト開催を取りやめ、オンライン開催(リモート参加のみ)とする形式へと変更されました。オンライン開催の模様は以下のブログ記事で取り上げていますので、興味のある方は、ご一読いただければと思います。

昨年末にも、「2019年のIPアドレス・AS番号分配ポリシーを振り返る」と題して、2019年のIPアドレス・AS番号の分配ポリシーに関する提案を振り返りました。今年も同じように、メーリングリストやオフラインミーティングでの議論を中心に動向を振り返ってみたいと思います。


IPv4アドレスの分配に関する動向・議論

APNIC地域では、2019年に一組織あたりの割り振りサイズを最大/23(512アドレス)とするポリシー変更を行った直後ということもあって、新たなIPv4アドレスの割り振りに関する議論はありませんでした。

その一方でAPNICでは、未利用であることが想定されるIPv4アドレスの回収に向けた動きを本格化させていました。APNICでのこれまでの取り組みはAPNIC50で紹介されていましたので、JPNICブログでも取り上げています。

JPNICブログ:IPv4アドレスの割り当て先組織のご担当者を探しています ~APNIC 50での話題から~

また、APNICとWIDEプロジェクトが設立した「Asia Pacific Internet Development Trust (APIDT; アジア太平洋インターネット開発信託)」により管理されていた、/9+/10+/11(約1400万アドレス)が入札を経て移転されたことも話題となりました。APIDTについては、JPNICブログで少しご紹介しました。

JPNICブログ:国際移転の準備をするには?

落札した組織については、JPOPF運営チームのメンバーによって考察されています。こちらについても興味のある方はぜひご覧ください。

第39回 JPNICオープンポリシーミーティング(2020/11/30)インターネット番号資源ホットトピックス(谷崎 文義さん:JPOPF運営チーム)

LACNIC地域では、2020年8月にIPv4アドレスの新規分配のための在庫が枯渇し、メンバーなどから返却されたIPv4アドレスを、新規メンバーへの分配用に利用する形での対応を開始しました。

LACNICは、APNICおよびRIPEと同様に、一組織(一メンバー)あたりの割り振り可能なIPv4アドレス数を制限する方式となっています。

一方、ARINはこの方式を採用せず、一組織あたりの分配IPv4アドレス数の上限や回数に制限は設けていません。制限は設けられていませんが、、分配可能なIPv4アドレスの在庫が無い場合には、分配可能な在庫が出てくるまで待機者リストに並ぶ、方式を採用しています。今後、IPv4アドレスの通常在庫の枯渇が予測されているAFRINICもこの方式を採用するようです。

IPv4アドレスの移転に関する議論

IPv4アドレスの分配先を変更する「IPv4アドレス移転」のうち、RIRをまたぐレジストリ間移転(Inter-RIR IPv4 Transfer)について、LACNIC地域とAFRINIC地域では大きな動きがありました。

LACNIC地域では、歴史的経緯を持つプロバイダ非依存アドレス(歴史的PIアドレス)のみ、APNIC、ARINおよびRIPE NCC契約組織間の相互のIPv4アドレス移転を可能としていました。2020年7月21日からは、LACNICメンバーへの分配済みIPv4アドレスが対象に追加され、AFRINICを除く4つのRIRで、対象IPv4アドレスに制限のないレジストリ間移転が可能となりました。

AFRINIC地域においても、AFRINICメンバー間のみのIPv4アドレス移転は可能な状況にあります。これに加えて、2020年9月には、レジストリ間移転を可能とするポリシー提案がコンセンサスとなりました。

コンセンサスとなった提案内容について他のRIRに照会を行ったところ、ARINコミュニティからは内容についてのコメントが相次いだため、現在もなおAFRINICでは提案内容の見直しが続けられています。

番外編

オンライン開催となったミーティングでは、これまでのオンサイト開催のミーティングでは見られなかった工夫もありました。RIPEミーティングでは、木曜日夜に開催されるディナーのレシピや音楽のリストが公開されていました。各参加者が同じ場所に集まらなくても、同じ雰囲気を共有できるように、とのRIPE NCCスタッフの願いがこめられているのかもしれません。

RIPE:RIPE 80 Dinner
RIPE:RIPE 81 Dinner

 

また、ARIN46ミーティングでは、スタッフおすすめのクッキーの店とレシピが「Cook(ie) Book」として公開されていました。議論のお供にクッキーを、ということなのだと思いますが、この冊子を眺めているだけでも十分楽しいですね 😎 

ARIN:Cook(ie) Book


2020年のポリシー提案や議論は、2019年と比べると、IPv4アドレスに関するものがほとんどとなり、IPv4への関心がいまだに高いことを裏付けるものとなりました。AFRINICのIPv4アドレスの通常在庫枯渇を目前に控えて、IPv4アドレスへの関心は一段落して、IPv6アドレスやネットワーク運用と関連のある議論が盛り上がって行くことを期待しています。

2021年2月には、APRICOT2021/APNIC51ミーティングが開催される予定となっていますが、現時点ではオンライン開催の予定です。新型コロナウイルス感染症の状況によっては、フィリピン・マニラでの開催も主催者は模索しているようです。

APNIC51ミーティングの開催前は、APNICのポリシーSIGメーリングリストで議論予定の提案内容が紹介されます。提案が出揃った2021年2月上旬頃に、日本でもJPOPF運営チームが「APNIC 51に向けた事前の意見交換ミーティング」を開催する予定です。どのような提案が出てくるかはまだわかりませんが、提案についての解説を聞けて、日本語で意見を表明できる絶好の機会です。興味のある方は、参加のご検討をお願いいたします!

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